薄桜鬼

□藤堂くんと沖田さんで三角関係
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ちゅっ

一体幾度目の口付けだろうか。

ぽかぽか陽気のこんな良き日に、俺は非番だった。

だからこうして部屋で、明日香を膝枕しながら刀の手入れをしている訳だが。

正直言って、全く捗っていない。

武士の命と呼ばれる刀も、明日香の前ではただの棒切れにしか見えなくなるのだから。


「…藤堂君」

「明日香…」


胡座をかいた膝に乗せられている頭を甘えるように擦り寄せてくる。

今まで連日の隊務で、ろくに会えていなかったからか、いつもより甘えくる明日香。

それが愛おしくて、もう一度身を屈めると、明日香の瞳も閉じられ

ちゅっ

目が合う度に口付けを落としているのだからきりがない。

だから、忍び寄る影にも気が付かなかった。


「平助」

「うわっ、総司!何時から…」

「ずっと前からだよ」


障子の陰からぬっと現れた総司に、寝転んでいた明日香も慌てて身を起こした。

ずっと前、ということは今までのことを見られていたということ…。

別に明日香と俺は恋仲だし、如何わしいこと何てない…筈だが、やはり何となく気まずい。


「で、何だよ!」


気恥ずかしさを誤魔化すように言うと、含み笑いをしてみせる総司。

この顔を見てよかったこと何て、何一つ無い。


「別に。刀の手入れは済んだのかなぁと思って」

「いや…まだだけど…」

「なら、さっさとやっちゃった方がいいんじゃない?あ、そう言えば、源さんと山南さんが呼んでたよ。非番の日ぐらい手伝いでもしたら?」

「なっ…!」


ほらな!!!
総司に会うとろくなこと無いんだって!!!
俺が何したっつーんだよ!!!


「それと。君も平助の邪魔しないようにしなよ」

「は、はい……すみません」


今度は明日香に向いた総司の矛先に、離れていた体を引き寄せた。


「明日香は悪くねぇよ!ただ俺が一緒にいたかっただけで…」

「そう。じゃ、いいよね」

「は?」


先程よりも深くなった総司の笑顔に、俺は背筋が凍った気がした。


「僕も今日非番だからさ。明日香ちゃん、一緒にお団子でも食べに行こうよ」

「「え!?」」


同時に悲鳴にも似た声を上げる。
総司の唐突さには流石の俺もついて行けない。

そんな様子を気にもしない総司は、唖然としている明日香の手を取り


「さぁ、行こうか。平助は忙しいみたいだから」


はぁ!?
俺を忙しくしたのは何処のどいつだよ!

俺は焦って総司の腕を掴んだ。


「ちょっ、離せよ!明日香は俺の傍に…!」

「平助。男の嫉妬何て見苦しいよ」


この野郎っ…!


「お、沖田さん!藤堂君はやることはちゃんとやる人ですから…」

「君は平助の邪魔をしたいの?」

「そういう訳じゃ…」

「なら、僕と出ていた方が賢明じゃない?」


総司の口車に乗せられては、誰もが口を閉じるしかなくなる。

あの鬼の副長をも悩ませるこいつは本当に尊敬する。良い意味ではないが…。

俺も男だ。
すげぇ嫌だけど、腹を括る。


「藤堂君…」


寂しそうに俺の着物の裾を掴む明日香。

こんな可愛いのに何で総司に渡さなきゃなんねぇんだよ!


「ごめんな。俺も一緒にいてぇけど、明日香もたまには外でのんびりして来いよ」

「うん……ありがとう。邪魔しないようにするから、頑張ってね」

「馬鹿。邪魔じゃねぇし!ちゃっちゃと終わらしてやるからさ!夜は…沢山一緒にいような」

「う、うん……///」


照れた明日香に名残惜しく口付ける。

一生会えねぇ訳じゃねぇけど、ほんの僅かな時間でも総司に取られるのが嫌で…。

確かに男なのに見苦しいと思う。

けどその位俺は、明日香に惚れているってことだ。

ちゅっ

総司に見せつけるようにわざと音を立てる。

案の定、それが癇に障ったのかこの上無い不機嫌顔で俺から明日香を奪い取った。


「それじゃ。頑張って」


これっぽっちも思ってないくせに頑張って、なんて。

部屋を出る瞬間、勝ち誇った笑顔を浮かべた総司が心底恨めしかった。


「あ"ーーくそっ!!!」


言い表せ無い苛つきを紛らわせるように刀を磨き


「覚えてろよ、総司!!!!!」


何て叫びながらも心では、気が気で無い位不安だった。

明日香と俺は恋仲。

そんなことある訳ねぇじゃん。
明日香と総司がそんな…。

湧き上がった良くない考えを掻き消すように頭を振った。





それでも
消えない不安




             続

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