薄桜鬼
□藤堂くんとの再会
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「おらッ!」
戸惑うことなく鮮血を吹き上げ、男を斬り伏せた。
その姿は悲しくも"平助君"なんて言えないような
だけど、今私の目の前にいるのは、確かに彼――
私が愛した、藤堂平助なのだ。
「平助君!」
今離れてしまったらもう二度と、逢えないような気がして、私は立ち尽くしている平助君にしがみついた。
「明日香…なのか?」
何かに耐えるように、声が震えていた。
「うん……私だよ。明日香だよ…」
「何で…戻って来たんだよ…危ねぇって言ったじゃん…それに、どんな思いで別れたと思ってんだよ……」
「ごめんね……でも、私…平助君に逢いたくて逢いたくて………逢えて、よかった…」
抱きつく腕に力を込めると、平助君は私を引き剥がした。
そして、真っ赤な瞳に私を写して
「こんな姿でもか?」
突き放すように言った。
「え………………………」
「こんな俺でも、逢えてよかったって思うのか?」
「……………うん」
「震えてんじゃん」
精一杯頷くが、体は正直だった。
それでも私は、平助君と離れたくなくて、必死に縋りつく。
「逢いたかったよ……逢えて、よかったよ」
しかし、平助君は思い切り私の肩を掴んだ。
「嘘つくなよ!よく見ろ!俺の姿、化け物ンだろ!おかしいんじゃねぇの?怖いなら怖いって言えよ!気持ち悪ぃなら気持ち悪ぃって言えよ!嫌いになったなら嫌いって言えよッ!」
そんな目で見られたのは初めてだ。
今の平助君からは、あの頃の平助君が考えられなくて、まるで全て忘れられてしまったようで、悲しかった。
と、同時に悔しくて、私は平助君に負けないくらいの力で抱きついて、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにして、負けないくらいの声量で叫んでいた。
「怖くない怖くない怖くない!だって、ここにいるのは私の大好きな平助君だもん!姿が変わっても、平助君なんだよ!だってあなたはこんなに温かい、こんなに優しい…あの頃と同じだよ!私が戻って来た理由も気持ちも、何も変わらないんだよ!」
だから、お願い
自分を見失わないで
「………明日香……頼むから、嫌いって…言ってくれよ……」
「大好きだよ」
「………んっ」
背伸びをして、自分から唇を重ねた途端、平助君が膝から崩れ落ちた。
私は何度も唇を重ねる。
そして唇を離した時には、もう平助君の姿は戻っていて
「明日香っ……」
やっと、抱きしめてくれた。
「平助君………」
「…明日香…ごめんな、ごめんな……俺、お前に酷ぇこと言って…」
「……んー?何のこと?平助君と口付けたら、忘れちゃった」
「………ばか」
おどけて見せる私の頭がぽんっと叩かれた。
「俺も、また逢えてよかった……本当は、こんな姿じゃもう逢うつもりなかったけど…来る日も来る日も、明日香のことばっか考えてて…新八っつぁんには"お前が一番先に死ぬかもな"なんて言われてさ。俺、明日香に逢えねぇくらいなら、それでもいいって思ってたけど…今、初めて思ったよ」
生きててよかった
平助君は、この戦場にも花を咲かせてしまうような言葉を呟き、私に口付けた。
どうしてだろう
逢いたかっただけなのに
ずっと一緒にいたいと思う
終