薄桜鬼

□藤堂くんとの再会
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――いってらっしゃい

そんな両親の別れの言葉を最後に目を開けると、壮大な荒れ地が広がっていた。

私は、戻って来たんだ。

けれどそこは既に、戦場と化した地だった。

地には血が染み込み、転がっている屍には、刀傷ではない穴が幾つも開いていた。

未来人の私は、すぐにわかってしまった――


「…銃が、入って来たんだ」


今は恐らく、鳥羽伏見の戦いだろう。

不安が渦巻く。

新選組のみんなは大丈夫だろうか、彼――

平助君は、無事だろうか

その一心で足は動いている。
私は走っている。

時に風に乗って、死臭が鼻を掠めたが、足は止めなかった。

早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く

あなたに逢いたいから























「まだ生きてる奴がいやがったか」




















しかし足は、いとも簡単に止められてしまった。

立ち塞がった男によって


「見たことねぇ着物だな。旧幕府側の女か。まァ、殺すことに変わりはねぇがなッ!」

「きゃっ……!」


思い切り振り下ろされた刀を、私はやっとのこと避ける。

だてに新選組と共にしていた訳ではないようだ。

しかし、所詮体は現代人。

この戦地を味方に出来る訳がなく、足を躓かせ転んだ私を男は上から嘲笑った。


「馬鹿な女だ。その足、ぶった切ってやる!」


刀を突き立てられ、思う。

何をしたかったのだろうか。
私は、この時代に戻って来て何がしたかったのだろうか。

ただ、あなたに





逢いたかっただけなのに






涙が戦場に零れた時、私の目によく見たあの背中が映っていた。

私を守ってくれた、あの背中が


「大丈夫か、嬢ちゃん!」


まるで残像みたいに、けどリアルに映し出される彼は、紛れもない


「平助君」


男と刀を交えたまま、顔を振り向かせた。


「明日香……?」


何だろう、この感じ………

随分離れていたみたいなのに、平助君は何も変わっていなくて、寧ろ私が変わってしまったんじゃないかと思う程。


「くっ……余所見、してんじゃねぇよッ!」

「あ"っ!」


平助君より何倍もある男は、平助君の腕を斬りつけた。

流れ出る鮮血が、浅葱色の羽織を汚していく。

あまりに痛々しい声を上げた平助君に駆け寄ろうとした私の足が、思わず止まってしまった。

不穏な、彼のようすを感じて

この状況に似つかない笑みを浮かべて、平助君は
























「効かねぇなァ」



























傷を癒やし、深紅の瞳、白髪の化け物に姿を変えた。
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