テニスの王子様♂

□一番に君に会いたくて
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真っ暗な部屋ですっかり寝入った頃、何度も鳴り響いた着信音で無理矢理起こされ、更には携帯の画面の明るさに目が眩んで余計にイライラした。


「…なんだよ 」


思いきり不機嫌丸出しで携帯を耳に当てると


「寝とったか?」


いつも通りの仁王の声が聞こえてきて、呆れて寝返りを打ちながら眩しい画面を細目で見つめる。

ーー12月3日 23時36分


「寝てんに決まってんだろぃ…今何時だと思ってんだ」

「…プリッ」


そんなしゅんとしたように言うなよぃ…切りづれぇ…。

仁王は同じクラスでも同じ部活でも、何を考えているのかわからない。
そんなところが好きでもあるのだけれど、大体俺が振り回されてしまうのには困る。


「はぁ……で、どうしたんだ?大事な用あったんだろぃ?」

「別にないナリ」

「おい!」


なんなんだよ…。

落胆して枕に顔を埋めると「ただ…」と言葉が続けられ


「会いたくなっただけじゃ」


その途端、顔にカァッと熱が集まってくるのを感じた。


「な、なに言ってんだよぃ…!こんな夜中に会える訳ねぇだろぃ」

「…そうじゃな」


また落ち込んだように呟く仁王。
やっぱりこいつはなにを考えているのかわからない。

もちろん俺も会いたくない訳じゃないけれど、言った通り夜中だ。しかも外は薄っすら雪が降り積もっていて、布団の中にいても肌寒かった。


「…明日朝一で迎えに行ってやるからよ。それまで待ってろぃ」

「待っとる…」


頬をかきながら、俺にとったら小っ恥ずかしいセリフを言ったのに、まだ仁王はどこか不満そうだった。


「絶対、朝一じゃよ」

「わかってるって。…そんじゃ、お前も早くねろよぃ。寝坊すんじゃねぇぞ」

「ピヨ…」


仁王は俺に念を押し、ひよこみたいに返事をした後、俺達は「おやすみ」と言い合って電話を切った。

ふう…とため息をついて枕元に携帯を戻し、もう一度布団に潜り直した。
でも、いつにも増して不思議な仁王の行動が気になって仕方ない。
あいつの行動が不思議なことなんて今に始まったことじゃないけれど、今日はどこか違和感のようなーー

しばらく部屋の天井を見つめていて、もう寝ちまおう、と決めた時、家にある大きな時計が12時を知らせた。

あーあ……考えてるうちに日付け変わっちまった。
今日は、4日……………


「………!」


そんなことを考えた瞬間、突然体が布団から飛び起きた。
急いでついさっき手放したばかりの携帯に手を伸ばし、画面を確認すると

12月4日ーー仁王の誕生日

その表示だけを確認して、俺は部屋に投げ捨ててあったマフラーと、すっかり忘れかけていた机の上の青い箱を引っ掴んで、転がるように家を走り出た。

手では急いでさっき通話したばかりのダイヤルへ繋げる。

頼む、出てくれ……!
祈るような気持ちで、虚しい呼び出し音を聞いていると


「…もしもし」


まだはっきりとした声が返ってきて、ホッと胸を撫で降ろす。

走りながら息が上がるまま


「悪い、仁王…!…会えるか?」

「……っ、もちろんぜよ」


電話の向こうで、仁王もがたがたと支度をしているのが聞こえる。

俺、こいつの相方失格だな…。

暗い空に白い息を吐き捨て、朝一なんて待っていられない、一刻も早く会う為にただ走り続けた。

この言葉は直接、誰よりも早く言ってやるんだ。


「仁王、誕生日おめでとう」





ー一番に君に会いたくてー


fin.

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