FINAL FANTASY 零式

□誘惑kiss
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「エース、ここってどういう意味?」

「ここは…」


今、エースの部屋で勉強を教えて貰っている。

エースは、頭が良くて真面目でクールで優しくて格好良くて、自慢の恋人。
でも一つだけ、悩みがある。

それは、恥ずかしがり屋?照れ屋?シャイ?
全部同じ意味だと思うけど…。

とにかく、エースはかなり草食系男子。
そこが好きなんだけど、今だキスもしてくれないし、勿論それ以上もある訳がない。
やっと手を繋げても全部私から。
こうして部屋に来ることも初めてではないけど、来る度何も起こらない…。

私に色気がない所為か、と悩みそれなりにアピールもしてみたが、全て撃沈だった。


「ねぇ、エース」

「どうした?また分からない所でもあったのか?」


優しいエースの言葉に首を振り


「今日、泊まってもいい?」


まだ続いているアピール作戦にエースはきょとんとしている。
その表情、可愛過ぎ!


「駄目だぞ。ここは男子寮なんだから」


男子寮だから?
僕の理性が〜とかじゃなくて?
んー…でもエースってそういうキャラじゃないもんね。


「えー。お泊まりしたいよ」

「デュースに頼んでみたらどうだ?」


それじゃ意味ないから!


「エースと泊まりたいなぁ」

「僕は、危ないから辞めといた方がいいんじゃないか?」


あ、危ない!?
私は、机に身を乗り出した。


「危ないって?」

「いや…僕、寝相悪いと思う」


寝相か、とがくりと肩を落とすとエースは時計に目を向け、伸びをした。


「そろそろ寝るか。ファイブ、もう帰れよ」

「……」


やはり泊まることは許されないのか…。

私には不安が募っていた。

本当にエースは、私のことが好きなのかな?

都合良く草食系なんて言ってるけど、本当はエースは始めから私なんて好きじゃなくて、告白を断れなかっただけなんじゃないかなって…。


「エース、好き…」


こうやって気持ちを伝えるのも私からで、ただエースは笑ってくれるだけ。
私は、エースの気持ちが知りたいよ…。


「ファイブ…っ」


名前を呼ばれて我に返ると、目から涙が流れていることに気付いた。


「どうした?」


そっと頭に手を乗せてくれるエース。
その手に自然と安心を覚えている私がいる。

ゆっくりと顔を上げると、綺麗な顔があって、その唇に吸い寄せられるように近付いていた。


「…っ!」


瞳を閉じ、そっと唇を重ねる。
エースとの初めてのキスは、私から。

唇が触れている間、ドキドキして死にそうだった。恥ずかしかった。怖かった。
やめろ、と突き放されたらどうしようかと思った。

恐る恐る唇を離しエースを見ると、驚きで目を開いたままだった。


「ごめん…」


そう一言だけ言うと、早足に部屋を出ようとした。
しかし、ドアノブに手を伸ばそうとした瞬間、体が後ろに傾いた。
訳が分からず目を瞬かせていると、首元にエースが顔を埋めているのが分かった。
息がかかってくすぐったい。


「エ、エース…!」


頭が今の状況について来ない。

これは、エースに抱きしめられている…んだよね?

え、どうしようすごく嬉しい!
そして恥ずかしい。


「あんな風にキスしといて、帰るのか?」

「あ…だって、」


エースの甘い息に体中に鳥肌が立った。


「エースは、私のこと…好きじゃないのかなって…」

「…そう思わせていたのは、僕の態度が原因だな。すまない…」

「エース、どうして…」


エースの顔が見たくて、後ろを振り返るようにすると、くるりと肩を回された。

向かい合ったエースは、見たこともないような表情をしていて


「卒業するまでは、ファイブに手を出さないって決めてたから」


その瞬間分かった。
今までエースは、堪えていたんだと。
途端に申し訳ない気持ちが込み上げてくる。


「…ごめんなさい。それなのに私…」

「ファイブの行動にも気付いてた。謝るのは僕の方だ」


華奢な指が私の頬を撫でる。


「…もう、我慢しなくていいよ。私、卒業まで待てない…」

「僕もだ。ファイブの所為で、待てそうもない」


エースはふっと微笑むと、ゆっくり近付いてきた。
反射的に目が閉じられる。

甘く誘惑されるようなキスに、私は幸せを感じた。



誘惑kiss
あなたから?私から?




fin,


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