FINAL FANTASY 零式

□風邪にご注意
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「こほっこほっ…こほっ…」


咳をする度、喉が痛い。体は重いし、寒いのに汗ばむ。熱がある所為か頭はぼーっとしていて、天井の一点をずっと見つめているばかり。

マザーから風邪と診断され、今日は授業を休んだ。

昼間は、0組のみんながお見舞いに来てくれて、風邪なんて感じられなかったけど、こうして夜一人になると、どっと怠さが押し寄せてきた。

ずっと寝ていたから今が何時かも分からない。

ただ額に乗せられた濡れタオルが冷たいことに疑問を抱いていた。

ギィ

不意に暗い部屋の扉が静かに開けられ大きな影が入ってきた。


「きゃっ…」


思わず近付いてきた影に重い体を起こすと、影はオロオロして


「バカコラ…!起きんなっ」


その抑えた低い声の主は


「ナイン…?どうして…」


そっと私の額の上のタオルを取ると、部屋の水道で揉み出し丁寧に私の額に戻した。


「…もしかして…ずっと、ナインが…?」

「ほ、他に誰がいんだよああん?」


目が暗闇に慣れ、照れたようなナインの表情が分かった。


「さっさと治しやがれ。うるせぇお前がいねぇと何つーか…調子狂うんだよ!」


ぶっきらぼうな言葉と反比例するように優しく頭を撫でてくれる手に、いつしか私も安心を感じていた。


「…うん。ナイン、ありがと…大好き」

「……っ」


ひんやりするナインの手を取り火照った頬に寄せる。
そのまま、ちゅっ、と手の甲に唇を付けると、ナインはびくっと体を震わせた。


「な、何だよオイ!やけに大胆じゃねぇか」

「…そう、かな?ナインが傍にいてくれてるからだよ…」


何だろう…。
ナインの言う通り大胆になっているのかな?
今私、すごくナインと一緒にいたい。
風邪の所為で、心細くなっているのかな?

でも、


「…ずっと傍にいて欲しいけど、風邪移っちゃうよね…。ナイン、もう帰った方がいいよ…」

「帰らせねぇのは誰だオイ」

「え…?」


ナインの言葉で、私は自分が矛盾していることに気付いた。

帰った方がいい、とか言いながらしっかりとナインの手を掴んでいたから。


「帰って欲しくなかったらそう言えバカが」

「あ…だめっ…」


顔に被さってきたナインの胸を反射的に押した。


「か、風邪…移っちゃう…」

「ああん?この俺が移るか」

「…でも、」

「んだ、ファイブはしたくねぇかよコラ」

「…そんなこと、ない…」

「ならいいじゃねぇか」


そう言って唇を重ねてくるナインには適わない。

私は、ベッドに横になりながら上から押し付けられるようなキスを受け入れた。

その情熱的なキスと熱に浮かされて、益々私の思考回路が低下していく。


「…ナイ、ン…もっと…」


甘えるように腕を回すと、ナインの眉間に皺が寄った。


「お前、何で風邪引いてんだよクソ…引いてなけりゃ、速攻で襲ってんだよコラ!」


そう言うと、体を離しベッドの隣に胡座をかいて座る。

キョトンとナインを見つめる私。


「これ以上してたらなァ、マジで襲うからここにいんだよ!だから、早く風邪治せコラ」


胡座をかいた足を揺する姿から我慢をしていることが分かった。

私は、離れてしまったナインに手を伸ばし


「…手、握ってて…」


驚きに目を開きながらも、伸ばした手を握ってくれる優しいナインにふにゃりと笑う。


「ファイブ、治ったら覚えてろよコラ」


暗闇でも分かる。
今のナインは、飢えた獣のような目をしている。

風邪だから熱だからって、ナインに我慢はして欲しくなかったし、それ以上に


「…ナイン、しよ…?」


今夜は、もっともっと近くにいて欲しかった。


「病人が何言ってんだ」

「大丈夫だもん…。だって、ナイン…したいんでしょ?風邪治るまでなんて、我慢できる…?私は、嫌だよ…」


怖ぇ女…そんな呟きが聞こえた。
私の思いを汲み取ってか、ナインは立ち上がりそっと馬乗りになって来る。


「知らねぇかんな」


朦朧とする頭の中で頷くとすぐに、布団が剥ぎ取られパジャマのボタンが外された。


「…あ、私…汗、」


寝汗でベタベタになった体を押さえると、ナインはそんなのお構いなしに首筋に顔を埋めた。


「風呂入る時間なんてやんねぇぞオラ」

「んっ…」


ナインの冷たい手と熱い舌が私の体を徘徊する。
その温度差が気持ちよくて、私はボタン全開のパジャマを脱ぎ捨てた。

外の空気は冷たくて、心地良かった。


「…ナイン、大好き」

「ああん?俺の方がその何倍も好きなんだっつの!」

「…何倍って、どのくらい…?」


意地悪をしたくて聞いてみると、ナインはニヤリとして


「今からそれを教えてやんだよ」


それからのことは、目の前が真っ白になって、よく覚えていない。



風邪にご注意
翌日欠席は言うまでもない




fin,


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