FINAL FANTASY 零式

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「私のこと、どう思っているの?」


そんな答え、昔から決まっていた。

私にそれ以上の答えもそれ以下の答えもない。


「…大切な仲間に決まっているでしょう」


私は、あと何回ファイブに嘘をつかなければいけないのでしょうか。

そもそも、どうして嘘をつき始めたのでしょう。

ああ、そう。
それは、ファイブとナインが恋人同士になった時―――

―私ね…ナインと付き合うことにしたの

この瞬間から。

私は、平然を装っておめでとうございます、なんてありきたりな言葉をかけた。

よりによって、あのナイン。

少々悔しい気もしましたが、彼も彼なりにファイブに惹かれるものを持ち合わせていたのでしょう。

私には無い、何かを。

―トレイ!

頭に浮かぶのは、ファイブの笑顔ばかり。

それなのに、ナインと付き合うようになったファイブは以前のように笑わなくなった。

それより、ナインとのことを相談してくるようになり、円満な恋人関係ではないようだった。

毎回、目を腫らしてやってくるファイブを励まし続ける。

別れてしまいなさい。

そう言えたら、ナインのように自分の気持ちを伝えることが出来たら、楽なのに―――


「つくづく、情けないですね」

自嘲気味に笑うと、自室の扉を開けた。

一眠りしたら、教室に戻りましょう…。

そうすれば、頬の痛みも胸の傷みも消える。

ベッドには、皺一つ無かった。

几帳面なファイブの性格を物語っているようで、自然と口元が緩んだ。

昨夜、ここで彼女を抱いた。

誘導するように、断らないと知っていながら行為に及んだ。

自分の気持ちも伝えず、ただファイブを欲望の捌け口とした私は、最低だ。

そんな私にファイブは身を委ね、最中には気持ち良いよ、と言ってくれた。

私が聞きたい。


「ファイブは、私のことをどう思っているのですか?」


どさりとベッドに倒れ込み、天井を見つめた。

きっと、あなたの答えも決まっているのでしょう。

ずっと昔から―――


ガチャッ



ゆっくりと部屋の扉が開かれた音がした。

顔を向けなくても、誰かわかった。


「ノックぐらいしたらどうです?…ナイン」


うっ、と息を飲んだ気配を感じ、体を起こすと、ナインは開けた扉の前に立っていた。


「入って結構ですよ」


素直に一歩部屋に入って来る。

何かを考えているのでしょう。
ナインの額には、いくつもの皺が出来ている。


「何か言い残したことでも?」

私の胸に冷たいものが投げられた。
手に取ってみると、それは氷袋だった。


「これは…」

「そのままっつーのも胸糞悪ぃからだ…コラ」


そういうところは、実にナインらしい。

無鉄砲だが、気遣い屋なところ。


「受け取っておきます」

「けっ…相変わらずムカつくやつだな、オイ」

「お互い様でしょう」

ナインも私も、頭が冷えたのだろうか。
嫌みを言い合っても、もう乱闘にはならない。いつもの空気。



ふと、ナインの表情が一段と険しくなり


「ファイブは俺の女だ」

「知っていますよ」

「…違ぇんだよ」

「何が違うんです?」

「俺が、あいつの男じゃねんだよ」

「は?あなた達は恋人同士でしょう」


私の言葉にだからぁ、と頭を掻き毟るナイン。

かなりイライラしているようだ。


「だぁー!知るかよコラァ!」

「あなたが言い出したのでしょう。いきなり大声を上げないで下さい」

「う、うるせぇ!俺にだって知らねぇことぐらいあんだ!」

「ナインの場合は、知らないことだらけでは?」

「ああ?んだとッ!…ま、そうだけどよ」


なんだろう。
先程のナインと比べると、かなり大人しい。

と言うか、元気がない気がする。


「ナイン」

「そんだけだ!俺ぁ、寝る!」

「ナイン!」


そそくさと部屋を出ようとするナインを呼び止めたが、


「ファイブはちゃんと大切にして頂かなくては、困りますよ」


答えは返されなかった。

―俺が、あいつの男じゃねんだよ

ナインの言葉の意味を知ったのは、それからしばらく経った頃だった。
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