FINAL FANTASY 零式

□初恋crazy
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「や、だっ……ナイン…!」


毎晩のように重なってくる体を必死に押し返す。

しかし、そんなことでこの筋肉質な体が退くはずもなく


「ぃっ…ナイン…!痛い…やだぁ、やめて…!」


ただ、悲痛に耐える涙を流すだけ。





初恋crazy






…………はぁ…。

机に頬杖をついて深い溜め息をつく。

重い体にムチを打って、やっとのこと教室には来たが、何一つ頭に入ってくるものはない。

強いて頭に入ってくるものを上げるとすれば、ナインの行動だろうか…。

彼が動く度に、私の体はびくっと震えた。

自分でも分かる。
怯えているのだ、と―――

私は、ナインが怖い。

付き合い始めて分かったことだが、ナインはかなり独占欲が強く、みんなが思っているよりも横暴だ。

始めは、私のことを思ってくれているんだ、と思っていられたが、その行動が段々とエスカレートしてくると、もう私はナインと以前のような関係を保つことは出来なかった。

けど、それよりも出来なかったことは、ナインから離れるということ。


「ファイブ。また溜め息ですか?」


ハッとして顔を上げると、トレイが腕を組んで立っていた。


「う、うん。なんか最近、上手く魔法が使えないなって思って…」


トレイには色々と相談事を持ちかけたが、まさかこんなことを言える訳がなく…。
しかし、咄嗟についたこの嘘が自分の首を絞めることになるとは思わなかった。


「魔法、ですか…。それでは私が見て差し上げますよ」

「え?」

「魔法の訓練です。候補生たるもの武術だけで、戦闘に挑むわけにはいきませんから」


そうと決まれば、とトレイは私の手を取るとスタスタと教室を出る。

ナインの視線が、痛い。

けれど、その視界から逃げられることに安心している私がいた。

連れて来られた場所は、墓地へと続く裏庭。

そこのテーブルに無言のまま座らされると


「いい加減、言ったらどうです?」

「え……」

「私が何も知らないと思っているんですか?それに、あなたの嘘くらいすぐに分かります」


トレイは表情を崩さずに言った。

昔からそう。

トレイは冷たい表情で温かい言葉をくれる。

それが余計、今の私を惨めにさせる。


「…ぅっ…トレ、イ…」


そっと頭を撫でられると、堰を切ったように目から涙が流れ出した。


「今まで、よく頑張りましたね」


「…うん…っ…」


差し出されたハンカチを受け取り、私はわんわん泣いた。
涙が枯れてしまう程泣いた。

昔はよくトレイに泣かされたのに、慰められるようになったのはいつからだっただろうか。


「トレイ…っ、どうしたらいいのかな…もう、ナインのこと分からない…ナインが怖い。…痛くて、痛くて…もう、夜が嫌だよ…」


途切れ途切れに嘆く私の言葉をトレイは無言で受け止めてくれていた。

嗚咽に震える背中をぽんぽんと規則正しく叩かれるのが心地良くて、安心させてくれた。


どのくらいそうしていただろう。

終始、トレイは無言のまま私を慰めてくれていた。

ふと顔を上げ、


「トレイ、もう大丈夫。ごめんね」

「…」

「トレイ…?」


離れようとしたが、トレイの腕はまだ背中に回されたまま。

心配になり顔を覗き込むと、左目が私を捉え、


「ファイブ」


いつにもまして真面目な表情のトレイに胸が動悸を早める。


「もし、あなたが嫌でなければ」


戸惑いを隠し、


「私なら、痛くないようにして差し上げますが」


思考が停止した。


「えっと…トレイ、それって…」


言葉の意味を理解しようと、無い頭をフル活動させる。

すると、何ら変わらない表情のトレイは、すっと手を握った。


「私に抱かれるのは、嫌ですか?」


今度こそ理解した。

けど、トレイの心理は分からない。

戸惑い、泳がせていた目が合うと、真面目じゃなく真剣な顔をしたトレイがいた。

だから、自然と答えていた。


「嫌じゃないよ」






























「ねぇ…ほ、本当に?」

「私が冗談を言うと思いますか?」

「…思わないけど、」


カーテンが閉められた薄暗いトレイの部屋のベッドに、私は仰向けになっていた。

今から何が行われようとしているのか、私は知っている。

不思議と嫌悪感は無いが、ナインとの行為を思い出すと恐怖感はある。

けどトレイは、いつもと変わらなくて男女の行為をするという実感すら湧かない。


「ト、トレイ…どうしてこんなことするの?トレイは嫌じゃないの?」


トレイは、ベッドに近付くと私の顔の横に両手をついて


「寧ろ、私にとったら嬉しいくらいですが?」


途端に別人のような顔になる。


「私が本当の快楽を教えてあげます」


そうして私は、トレイの腕の中へと溺れていった。
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