FINAL FANTASY 零式

□槍を振るう意味
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あぁ?
んなの"戦う"為に決まってんだろ。

それ以外、ある訳ねぇ!


「うらぁっ!」


大振りな槍を振り回して、皇国兵を薙ぎ倒して行く。

その快感と言ったら―――


「オラオラァ!もっと骨のある奴ぁいねぇのか、ああん?でけぇのかかってきやがれ!」


一人倒したら、もう止めらんねぇ。
見える敵全員殺んなきゃ気が済まねぇんだよッ!


「ちょっとナイン…!独断で動かないで!あんまり離れちゃ、三位一体も出来なくなる…っ」

「そうですよ!そもそもこの作戦は、私が敵を誘導しファイブとナインが接近戦に持ち込むもので…」

「うるせぇなァ。んなのどーでもいんだよ!お前ら、俺からはぐれんじゃねぇぞ!」


大きく溜め息をつくトレイとファイブを追い越し、ぐんぐん敵陣に攻め込む。

俺ぁ、二人みたいな頭使った戦いなんざ出来ねぇ。

思ったまま、感じたまま、動いたまま槍を振るだけだ。

目の前の敵だけ見て――


「ファイブ!」


その時、切羽詰まったトレイの声が後ろから聞こえ、思わず振り返ってしまった。

いや、トレイの声に振り返ったんじゃねぇ。
叫ばれたその名前に振り返ざるおえなかった。


「いゃ…!」


そこで俺が目にしたものは、でけぇロボ(ニムロッド)に銃口を向けられているファイブの姿だった。

足を痛め、立ち上がれないようだ。

トレイも向かい打つ敵に苦戦し、ファイブの元へは向かえない様子。

銃口はメラメラと熱を帯び、今にも火を吹く勢い。


「ファイブッ!」


俺は、後先考える間もなく地を蹴っていた。


「……!」


ファイブが目を瞑るのとロボの銃が発光したのは同時だった。

けど、俺のジャンプはどれよりも早くロボに命中していて、ガシャーンッという機械音と共にロボは崩れた。


「…ナイン…!」


振り返ると、真っ青な顔でファイブは笑った。


「バカか!離れんなっつったのはどこのどいつだ!オイッ」

「は、離れた訳じゃないよ…ちょっと隙取られただけっ」

「気抜いてんじゃねぇぞ、コラッ!死んでも知らねぇかんな!」


そんな言葉しかかけられない。


「ファイブ!大丈夫ですか?」

「…うん!ありがとう、トレイ!」


遠くで弓を引きながら言うトレイ。

俺は、大丈夫か?の一言も言えない。

明らかにファイブは、元気をなくした顔をしていた。

悔しそうに何度も立ち上がろうとしては、尻餅をついている。



その間にも、敵は寄ってたかって集まってきた。


「くそっ…!」


俺は、燃え盛る炎に唾を吐き捨て


「オイ、コラファイブ!」

「な、何…」

「仕方無ぇから、お前は俺が守ってやる。今回だけだからなァ!大人しく、俺の後ろにいやがれッ」


驚いた顔をしたファイブをちらりと見た後、槍を一振りした。

ありがとう、ナイン。

その言葉は、戦場の斬音に掻き消され聞こえなかった。


この時、俺は初めてこの槍がこんなに重かったことを知った。

もっともっと槍を振るいたいのに、向かって来る全ての敵からファイブを守ってやりたいのに、このもどかしさ。

俺は、まだ知らない。





槍を振るう意味
大事な人を守る為




            fin,

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