FINAL FANTASY 零式

□生クリームより甘い
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「おらっ!」

「え?」


突然、後で俺の部屋来いコラッ!と半ば脅し口調で言ったナインの言葉に従い部屋に訪れた。

途端、乱暴に押し付けられたのはナインには似つかないピンク色のリボンでラッピングされた箱だった。


「な、何?」

「ああん?お前、今日生まれたんだろ!だからその祝いだ」


暫くナインの言葉の意味を考えてみた。


「あ!もしかして、私の誕生日覚えててくれたの?」

「そう言ってんだろ。コラ」


先程の言葉では、大分そう言ってはいないような気がするのだが…。

それよりも、ナインが誕生日何ていうものを覚えていてくれたことが嬉しくて


「ナイン、ありがとう!」

「うわっ!な、何だよ、オイ!」

「ナイン、大好き!」


照れるその胸に擦りつける顔、私より何倍も大きく太い腰に回り切らない腕。

私は、しがみついたままナインを見上げた。


「開けてもいい?」

「か、勝手にしろ…!」


照れた顔を隠すようにそっぽを向いたナインの前で、箱の上部をそっと開いた。


「わぁ!美味しそう!」


テーブルに駆けて行き、全形を箱から取り出してみる。

それは、真っ白なホールケーキで、中央には可愛いクマがちょこんと座っていた。


「ナインが買って来てくれたの?」

「ああん?他に誰がいんだよ。持って来んの大変だったんだぞ!」

「ふふっ」


任務の帰り道、この箱を慎重に持ち歩いてくる姿が目に浮かび、思わず笑顔になってしまった。


「何だよッ」

「んー何でもない!とっても嬉しい!ねぇ、ケーキ一緒に食べよう?」

「あぁ…」


腕を引っ張ってテーブルにつくと、お互い隣り合ってケーキを頬張った。

切り分けられたワンピースのショートケーキを食べるナインが可愛い。

ちらりと見ると、苺を倒さないよう慎重にフォークを突き刺していた。


「あ、ナインは苺最後に食べる派なんだ!私は最初に食べちゃうよ」

「あ?普通最後に食うだろーが。最初なんて勿体無ぇ」

「えーそうかな?取られちゃうと嫌だから最初に食べるよ」

「は、誰が取るかよ。いいか、苺は最後だ分かったな!」


子供みたいに言い張るナインの顔を見た途端、あまりに不意打ちで吹き出してしまった。

だって


「何だ、コルァ!」

「ご、ごめん…だってっ、ナインほっぺにクリームが…」


お茶目に口の周りには、真っ白の生クリームがついていたから。

それが可愛くて、可愛い過ぎてナインには申し訳ないが笑いが堪えられなかった。


「くそっ…!」

「あ、待って!」


無造作に制服の袖で口元を拭おうとしたその腕を掴んだ。


「服にクリームついちゃうでしょ。はい、拭いてあげるから」

「いらねぇ!」


ハンカチを手にすると、照れたように顔を背け抵抗を始めた。


「ダメ!ナイン、絶対服で拭いちゃうでしょ」


背けた方に回り込み、また背かれては回り込み……………

そんなことを繰り返していると、突然ハンカチを持つ手を力強く引かれた。


「きゃっ」


その反動で、椅子に座っていたナインの膝の上に倒れ込んでしまった。


「ナイン…!」

「そんなに拭きてぇって言うならなァ」


見上げたナインの顔は、不敵な笑みを浮かべていた。


「直接口で拭きやがれ。オラ」

「んぅ…」


乱暴に体を引き上げられると、がむしゃらに唇を押し付けられた。

これじゃ重ねたんじゃなくて、ぶつけた状態。

いつもの、彼らしいキス。


「……ナイ、ン」


私もそのまま、ナインの頬に両手を添えて口元に舌を這わせた。

言葉通り、口で拭うように


「ファイブよォ…」

「ん?」


一頻り舐めて、生クリームが取れたことを確認すると色気を帯びたナインの声がし、


「お前、甘ぇんだよ」


されるがまま、再び乱暴に唇をぶつけられた。

そのキスは、とても甘い。




生クリームより甘い
あなたの乱暴なキス




            fin,

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