テニスの王子様

□仁王くんとお風呂
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雅治に手を引かれてやって来たのは、お風呂場だった。
目的を容易に想像出来た私は恥ずかしくて、握られた手を引いて小さく抵抗するも、微笑んだ雅治にすぐ引き戻されてしまった。
初めから私も嫌がるつもりもなかったが、いざお風呂場に来るとなんだか照れくさかった。


「脱ぎんしゃい」


そう言って自分の上着を脱いで、早々と上半身裸になる雅治。
露になったのは、スポーツマンらしく無駄な脂肪が一切ない筋肉質な体だった。
初めて見たわけでもないのに、あまりに綺麗で思わず見入ってしまう。


「美香、自分じゃ脱げんか?」

「そ、そんなことないよ。脱ぐから先に入ってて」


見入ってしまっていたことが恥ずかしくて、雅治に背中を向け自分の上着のボタンに手をかけた時、後ろから肩を掴まれて前を向かされた。


「こっち向いて脱ぐんじゃよ」

「でも、恥ずかしい…」

「俺だって恥ずかしいぜよ」

「…うそ」

「それにお前さんだけ見せんのは、フェアじゃないじゃろ?」


見てたことバレてたんだ……と顔を伏せた時、長い指が器用にボタンを外し始めた。
私の顔を伺いながら真剣な眼差しで見てくる雅治が格好良過ぎて、抵抗も出来ない。
されるがまま脱がされ、ピンクと黒のブラが露にされた。


「いつ見ても綺麗じゃの」

「………ん、」


谷間を指でなぞられ、ゾクリと鳥肌が立った。
その反応に気を良くした雅治は、そのまま胸元に顔を埋めチクリと吸い付き、赤い痕を残す。


「…雅、治…」

「続きは風呂場でな。先に入っとるから早う来んしゃい」

「え………」


てっきり脱がしてもらえると思って期待してしまっていた私を置いて、雅治は腰にタオルを巻くとさっさと浴室へ入って行ってしまった。


「…いじわる」


ぽつりと独り言を言って手早く残りの服を脱ぐと、私も体にタオルを巻いて浴室に入った。

白い湯気が立ち込める中、雅治は湯船に浸かっていた。
いつも縛っている銀髪の襟足が濡れて色っぽく見える。そこに口元のほくろ。
女の私でも羨ましくなるくらい雅治は綺麗だ。


「さっきから見過ぎじゃよ」

「だって雅治が綺麗なんだもん」

「お前さんには負けるがのぅ」

「もう、冗談ばっかり…」

「本気じゃけぇ」


冗談っぽく笑う雅治を横目に背中を向けて体を洗い終えると、私も濡れたタオルを巻いたまま湯船に入る。
手で促され、足を伸ばすようにして背中を雅治に預けて浸かった。頭はちょうど雅治の肩口にフィット。


「気持ちいいね」

「そうじゃろ。俺と入っとるんじゃからな」

「またそういうこと言う…」

「プリッ」


いつものセリフが反響して耳に残るうちに、雅治は私の濡れた髪をかき分けてうなじにキスをした。


「…まさは………んむ、」


驚いて振り返った私の唇が待ち伏せていたかのように捕まえられた。
そのまま熱い舌を絡ませられ、湿った息を吹きかけられる。一連の動作がますます色っぽくて、虚ろな目でただ雅治を見つめていた。
後ろから覗き込まれるように絡まる視線が新鮮で、私からも唇を重ねる。


「今日は積極的じゃのう」

「…ん、ただの気紛れ…」


寄りかかる私の体を支えながら追いつめるようにキスをしてくる雅治の手が次第に不穏に動き始める。
右手はタオルから伸びる太股を撫で、左手はくびれから腹部を往復している。


「…はぁ……雅治、今エッチなこと考えてるでしょ」

「んー…どうじゃろな」


なんて曖昧に答えながらも、さらに右手はきわどい内股を撫で、左手は胸を揉み出す。

熱気と体温で興奮した頭が卑猥な方向にしか回らなくなりそう。


「……もうっ…雅治のエッチ……」

「美香といるのに考えんわけないじゃろ。…プリッ」


ずるいプリッだ…と思いながらも、それは私も同じだと思う。
私だって、雅治じゃなかったらこんな気持ちにならない。


「大丈夫…?」


お尻に硬く熱いものが当たっていることに気付き振り返ろうとすると、抱きしめで制された。


「雅治……」

「すまん。ちと余裕ないんでな、しばらくこのままでいてくれ」


そう言ってゆっくり息を吐く雅治が愛おしくて堪らない。
だから私も、回される腕を解くと体を反転させて雅治と向き合う。


「美香………ん、」


背かれそうな顔を捕まえてキス。
汗かお湯かわからない水滴がお互いの額を伝い、キスをする口元に流れ込んでくる。唾液と一緒にそれすらも飲み干して


「…どんな雅治も、大好きだよ」


両手を首の後ろに回すと、自然と体に巻かれていたタオルが水中でゆっくり解けていった。
私は焦りも恥ずかしさもなく見つめ続けると、雅治は根負けしたように


「お前さんには、なんでもお見通しなんじゃな。俺、一応ペテン師って呼ばれとるんじゃけど」

「私の前ではただの雅治なの」

「ただの、か…参ったのぅ」


眉毛を下げて笑いながら、露になった私の胸元の赤い痕を指でなぞる。

あ、違った。ただの、なんかじゃない。

その真意を読み取って、私は雅治の胸板に顔を寄せるとちゅっと吸い付き、肌に映える赤い痕を指でなぞって見せる。
お互い満足そうに微笑んで抱きしめ合うと、同じ胸元の位置にある赤い痕もそっと重なり合っていた。



fin.

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