イナズマイレブン
□炎を纏う
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無印1期マネ設定
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「豪炎寺君…」
白で統一されている部屋には、皺のないベッドに横たわる1人の少女と、その横に寄り添うようにして椅子に座っている豪炎寺君の姿があった。
それは、悲しくも見慣れてしまった情景。
「新しいお花、置いておくね」
「…あぁ」
抑揚のない、短い返事。
無理もないと分かっているのだが、寂しく感じてしまうのは私の我儘だろうか。
彼にとって夕香ちゃんは、大切な家族。
他人の私なんて、到底及ぶわけがないのに、意地汚い私がいる。
私のことを見て欲しい、と思う私がいる――
「…ごめんな、夕香」
見たこともないくらい優しく頭を撫で、穏やかな眼差しを向ける。
それは、
私の知らない彼。
私には見せない彼。
「豪炎寺君のせいじゃないよ…」
「違う…俺が、もっと強ければ夕香は、こんな事にならなかった…俺が、サッカーをしていなければ…!」
大事な人と大事なものを天秤にかけ続ける豪炎寺君。
私の言葉は、ちっとも彼には届いてくれない。
この思いと共に――
「豪炎寺君…!」
顔を歪め、自分の右足を殴る豪炎寺君。
その姿は、フィールドのエースストライカーの面影を全く感じさせない程痛々しく、私は思わず彼の頭を引き寄せていた。
「優木…」
「自分を、傷つけないで…夕香ちゃんが大好きだったサッカー、やめないで…」
「でも、俺にサッカーをやる資格はない…!」
「あるよ。夕香ちゃんは目を覚ましたら、豪炎寺君のサッカーを見ること楽しみにしてはずだから、続けなきゃだめだよ…」
「………っ」
豪炎寺君の肩が震えていた。
押し殺すようなくぐもった声が部屋に響いた。
私にかかる彼の重みが幸せに感じた。
「1人で抱え込まないで…」
誰よりもサッカーが好きな彼。
雷門のエースストライカーは炎を纏い、人を寄せ付けない程の情熱を燃やしている。
だけど、こうして触れても火傷することはない。
彼は、優しいから――
「…ありがとう、優木」
私は、あなたを支えたい。
例えその炎が、誰かのために燃えているとしても。
炎を纏う
あなたに触れたい
fin.