イナズマイレブン
□雲を晴らす風
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無印1期マネ設定
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「風丸先輩、陸上部にはいつ戻って来てくれるんですか?」
俺は元々陸上部で、サッカー部へは、帝国学園との練習試合の助っ人だった。
だったはずなのに、いつからだろう。
サッカー部にいることが、当たり前になっていたのは
「戻って来てくれるんですよね?」
即答出来なくなっていたのは
「風丸君……」
控えめに声をかけられ振り返れば目に焼き付くような、ジャージ姿の優木が立っていた。
「聞いてたのか…」
「ごめんね…盗み聞きするつもりはなかったの…!その…風丸君の帰りが遅かったから、みんな心配してて……ごめんなさい…」
俺の言い方が悪かったのか、顔を伏せ仕切りに誤る優木。
そんな仕草が可愛くて、もっと近くで見ようと距離を縮めた途端、ビクッと震えた彼女の肩。
「顔上げろよ。折角の可愛い顔が見えないぞ」
「あ……!///」
優木の両頬を手で包み、顔を上げさせると、その柔らかな頬は一瞬にして赤く染まった。
「か、風丸君……!///」
「顔、真っ赤だぞ」
「言わないでよ…!」
「お前が可愛くてさ」
そう言うと、優木は目を見開いて、意外だなと呟いた。
「何がだ?」
「風丸君がそんなこと言うなんて」
「…優木、だからな」
俺は、気付いた。
「サッカー部に入ったのは、優木がいたからだったのかもな」
「え!///」
引いた赤みがぶり返してきた時、でも…と再び目が伏せられた。
「風丸君…陸上部に戻らなきゃならないんでしょう?」
頷けない。
頷かなくてはならない。
でも、否定出来ない。
肯定も出来ない。
そんな顔されたら、そんな風に言われたら
ますます離れられなくなるだろ?
「優木…」
気付けば、自分でも驚く程弱々しい声で彼女の名前を呼び、その体を抱きしめていた。
初めて知った。
優木はこんなに小さくて、こんなに柔らかくて、こんなに温かかったのだと――
「風、丸君……」
「俺は、渡したくない。サッカー部としてのディフェンスのポジションも、お前の隣も…」
まるで縋るように、優木の首元に顔を埋め、細い背中に腕を回す。
別に走っていないのに、お互いの心臓がドクドク言っている。
すると、ぎこちない優木の腕も俺の背中に回ってきた。
「…私も、風丸君がサッカー部に入ってくれて良かった…ずっと、いて欲しい…そうすれば、みんなも喜ぶし…」
そして優木は、俺の迷いも一瞬にして吹き飛ばすような言葉を続けた。
「…私も、嬉しいよ…」
彼女の言葉は、まるで曇りを晴らす風のようだと思った。
雲を晴らす風
俺の心も晴らす風
fin.