イナズマイレブン

□素直の理由
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「どうしてくれるんだ」

「どうしてくれます?」


怪訝な俺もお構いなしに、狩屋は置かれたソファーへどかっと座る。

張本人のこいつが一番今の状況を理解していない。

旧部室を見たいと言った狩屋を連れて来たまではよかった。

しかし、小部屋へ足を進めた狩屋を追いかけた途端


外鍵が閉まったんだ――


「霧野先輩、何で鍵持ってないんですか」

「お前がうろちょろしてたからだろ!」

「俺のせいにするんですか」

閉じこめられてから何回同じ様な言い合いをしただろう。

埒があかない、と俺も近くの椅子に腰を下ろすと、格子の窓から月が見え、もうこんな時間かと思わせられた。

携帯も鞄に入れっぱなしの為、連絡手段がなく、手持ち無沙汰。


「…………」


続く沈黙の時間。

一緒にいるのは狩屋なのに、変に緊張している自分がいる。

その証拠に、狩屋が体勢を変えた反動で鳴ったソファーのギィッという音に、肩が跳ねた。


「…霧野先輩」

「な、何だよ!」

「俺のこと、警戒してます?」

「し、してない!」

「素直じゃないんだから」


火照った顔を見られたくなくて顔を背けたが、周りは既に薄暗く、月明かりだけが頼りだった。



「腹減った…」

また暫くすると、狩屋が力無く呟いた。
それには俺も同感で、今にも腹の虫が鳴りそうだった。

「あ、そう言えば…」

俺がポケットにある物を思い出し取り出すと、それを見た狩屋の目の色が変わり

「浜野からチョコ貰ってたんだ。これ半分にして…」

「もーらい!」

あっさり手から食料を奪い取られた。

「こら!半分だって言ってるだろ!」

「そんなこと言わないで、ここは後輩に譲って下さいよ」

「返せ!狩…」

屋、と手を伸ばした瞬間、暗闇で足を取られ、俺は前のめりに倒れた。


狩屋の上に――


「ってぇ…」

「霧野先輩って」

「……っ」

押し倒すように上にある俺の体を抱きしめて、狩屋は顔を見つめてきた。

「意外と大胆なんですね」

「これは違う!離せよ!」

「嫌です」

暗闇に慣れた目が捉えたのは、反転した視界で俺を見下ろしている狩屋の顔。

「狩屋…!」

「俺、本当は閉じ込められてよかったって思ってるんです」

「は?」

「…霧野先輩に、こういうこと出来るから」

「んっ…」

言葉半ばで重ねられた唇。
それを割って入ってくる舌。

その全てが、狩屋からは想像が出来ないくらい情熱的で、優しかった。


だから俺は、抵抗しなかったんだと思う――


「…俺、だって…そうだ、よ」

「霧野先輩…」

あっという間に脱がされ、露わになった胸の突起を狩屋の口に含まれると、体が自然と反応した。

「……あっ…は、ぁ…」

「先輩、綺麗です」

そう言って狩屋は、その行為を思わせるように、俺の手の親指をしゃぶり出す。

「…ふゃ…っ…やっ」

生温かく柔らかい舌の感触、手首を伝う唾液がくすぐったいやらで、変な気分になる。


しかし、狩屋はなかなか俺自身に触れようとはしない。

体は既に、更なる快感を求めているというのに――


「かっ、りや…ぁ」

「気持ちいいですか」

「……ん、もっと…」

「もっと?」


わかってるくせに聞く狩屋は、やっぱり意地悪だ。

待ちきれない俺は、息上がったまま言う。


「……して」

「俺とイきたいって、思ったんですか」

「……うん」

「こういう時は、素直なんですね」


嫌みを言いながらも、可愛いです、といつもと違く穏やかにはにかんで見せると、狩屋は綺麗なその指で俺の下半身を撫で始める。

「…ゃんっ…ぁっ!」


俺の上で仕切りに腰を振る狩屋が愛おしく、途切れ途切れになる意識の中、俺は呟いた。


「…俺が、素直になれるのも、なれないのも…お前だから、だよ――」




            fin.

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