イナズマイレブン
□変わらないもの
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「霧野、帰ろうか」
「あぁ!」
練習後学ランに着替え直し、いつものように帰ろうとした時だった。
「霧野先輩〜♪」
「おい、狩屋!…悪い神童、先に帰っててくれ」
鮮やかな髪を靡かせて走って行く霧野の背中を見ながら、引き止められない自分を情けなく思う。
俺は、幼なじみ1人後輩から奪い取れないんだ――
「いいのかよ」
立ち尽くしていた俺に、倉間は鼻で笑う。
「すんげぇムカついてるんじゃねぇの?」
「…いや、ただ自分が悔しいんだ」
「はぁ?悔しいのかよ!そこは"狩屋がムカつく"って言えよ。お前、霧野のこと好きなんじゃねぇのかよ」
そう言い残し去る倉間の言葉が理解出来ず、俺は呆然とするばかり。
「俺が、霧野を好き…?」
いや、確かに今までも"好き"だった。
でもそれは、自分の中のどういう"好き"だったのだろう?
今じゃ、そんなこともわからない。
ただ一つわかるのは、この思いが昔とは違うということ。
変わらないもの
なんてない
「神童!」
一人帰り道を歩いていると、後ろから2つに縛った髪を揺らして、霧野が走って来た。
「はぁはぁ…よかったっ…一緒に、帰ろうぜ!」
膝に手をついて息を整える霧野を、俺はただ驚いて見つめる。
「狩屋はいいのか?」
「…あいつ無駄にチョロチョロしやがって…明日とっ捕まえる!それより、神童と帰りたくて…」
あ……。
「霧野…約束、覚えててくれたのか?」
――きりの!これからもずっといっしょにかえろうね!
――うん!しんどう!
そんな小学校低学年の約束を霧野はまだ………………
「神童との約束を忘れるわけないだろ?でも今は、約束がなくても一緒に帰ってたと思うぜ」
「どうしてだ?」
本当に何気なく聞くと、夕日はもう沈みかかっているのに、霧野の頬が赤く染まった。
「神童が、好きだから」
きっと、俺の頬も同じように染まっているだろう。
「俺も、霧野が好きだよ」
まるで、そう言う言葉をお互いが知っていたかのように、心が落ち着いている。
どんな"好き"かなんて、初めから変わっていなかったんだ。
俺達は、あの頃と同じように肩を並べて歩き出した。
変わらないもの
それはここに
fin.