イナズマイレブン
□キャプテンの資格
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万能坂戦後
↓
練習メニューを手にグランドを見渡すと、みんな笑顔でボールを蹴っていた。
少し前までは考えもつかなかった光景に、思わず笑みが零れる。
いいんだよな?
俺達、自由なサッカーしていいんだよな?
「キャプテーン!次何やればいいですか?」
「あ、じゃあ…試合形式でやるか」
「「はい!!!」」
でも、こいつらの笑顔を見るとそんな不安は消えてしまって
俺は間違ってないんだ、って思わせてくれる。
いつだってこんな俺を“キャプテン”と呼んで――
「あれ…?」
ふと俺は、グランドに見当たらない姿を探して、周りをぐるりと見渡した。
万能坂戦の時の右足の怪我で、別メニューのはずだったが、どこへ行ったのだろう…
その場を三国さんに頼むと、俺の足はまっすぐに向かっていた。
昔からあいつの好きだった場所へ
そこで、うずくまった背中を見つけた。
「やっぱりここにいたのか、霧野」
「…神童…」
「霧野は、昔から河原が好きだったもんな。ここにいると思った」
「……………」
「どうした?」
霧野は包帯を巻かれた足を抱えたまま、ずっとうずくまっていた。
「…ごめん、神童…足怪我して…」
「何でお前が謝るんだよ?」
「俺が怪我したせいでお前、俺の別メニューまで考えて…
ごめん、大変な思いさせて…なのに、俺は何1つお前を助けてやれない…昔から」
体を縮込めて、顔を隠している霧野の肩を引き寄せた。
「そんなことないよ。俺はいつだって、霧野に助けられてるさ。俺の方が怪我させて、ごめん………キャプテン失格だな」
「失格なんかじゃない!俺は…神童がキャプテンだったから、ここまでサッカー出来たんだ!雷門に入っても、ファーストに上がっても…お前以外キャプテンはいないんだ!」
霧野は俺の目をじっと見つめ、力強い言葉をかけてくれる。
やっぱり、昔から支えられていたのは、俺の方だよ。
「やっと、顔上げてくれたな」
俺は霧野の綺麗な頬に手を添えた。
「ありがとう。俺だって、霧野がいてくれるからキャプテンでいられるんだぞ」
「神童…」
見つめ合っていた瞳が、吸い寄せられるように近づく。
お互い瞼が閉じられ、吐息が混じ合った。
「神童キャプテン!霧野先輩!」
突如名前を呼ばれ、即座に近付いていた体が離された。
けど、体が離れた後も心臓は高鳴り、お互いの顔が見られなかった。
「お、お前達…」
「あんまり遅いから、みんなで探しに来たんです!」
そう言って走ってくる部員達の姿に、俺と霧野は顔を見合わせて笑った。
「やっぱり神童は、俺達のキャプテンだな」
もし俺にキャプテンの資格があるとしたら、この部員達がいることだ。
そして、お前がいる。
いつだってこんな俺を“神童”と呼んで――
fin.