イナズマイレブン

□愛々傘
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「やべ…雨降ってる」


練習中、ずっとどんよりしていた空が、着替えを終えてサッカー棟から出てきた頃には、既に大粒の雨を降らしていた

それを見て立ち往生している霧野先輩


「あれ?もしかして霧野先輩、傘忘れたんですか?」

「帰るまでは降らないと思ってたんだよ!」

「意外と間抜けなんですね」

「何だと!」


とか怒りながらも、傘を忘れたことが恥ずかしいのか、先輩の頬はほんのり染まっていた


「俺、傘持ってるんで一緒に「あ、なら送ってくぞ、霧野」


俺の言葉をかき消すように、発せられた言葉

その主はもちろん、神童先輩


「いや…悪いよ、神童」

「気にするなよ。家も近いんだし。
それに、霧野は大事なディフェンスの要だ。風邪をひかせるわけにはいかないよ」

「神童…ありがとう」


何だよ。
幼なじみの特権か?

恋人より、そんなに幼なじみがいいのかよ…





俺は青い傘を開くと、水たまりを蹴って歩き出した


さっきの光景が頭から離れない

それは、不覚にもあのふたりをお似合いだなと思ってしまったからだ


俺と恋人同士になっても、霧野先輩の頭の中には、必ず神童先輩がいる

いっそのこと、俺以外の記憶をこの雨で洗い流してやりたい



「狩屋!」



雨の落ちてくる灰空を仰いだと同時にかけられた声

振り返らずとも、その声が誰かわかった


だって誰よりも愛しい人だから


「い、入れろ…!」


照れたように顔を背けて傘に入った先輩は、髪も学ランも濡れていて、肩で息をしていた


「神童先輩と帰るんじゃなかったんですか」


俺を追いかけてきてくれたことが見受けられ、嬉しいはずなのに、つい嫌味を言ってしまう


「わ、悪いから断ったんだよ…!」

「幼なじみには随分気遣うんですね」

本当はわかってるけど、動揺する先輩に言わせたくてわざと、でも半分本音を含ませて言うと、思った通り更に赤くなる先輩の顔

今はそれが近くで、一層よく見える


「…お前と帰りたかったからだよ…!」

言った

「俺と相合い傘したいなら、最初から言えばいいのに」

「なっ…///」

「ほら、もっと寄らないとまた濡れちゃいますよ」


照れる先輩の腰を引いて、俺たちは肩を寄せ合って雨の中を歩いた


明日も雨が降らないかなと思った


            fin.

狩屋と相合い傘をしたくて傘を忘れた蘭丸君の話。
ふたりの場合は愛々傘。

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