イナズマイレブン
□心まで
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「俺がヒロトさんからボールをとれたら、狩屋を連れて行くのを諦めて下さい」
いきなり先輩から発せられた言葉に、俺は耳を疑った
「どうして君が?」
「こいつの先輩だからです」
出来るはずないと言いたげなヒロトさんだったが、先輩の目を見るとゆっくり頷いた
明かりが点けられた雷門中のグラウンドに、ボールを持ったヒロトさんと霧野先輩が向かい合う
「ちょっと…先輩がこんなことする必要ないじゃないですか」
「言っただろ?俺はお前の先輩だ。可愛い後輩が引き抜かれそうになるのをただ見ていられるか」
あんたが可愛いって言うなよと呟きつつ、いつも以上に凛々しい先輩の横顔と、その言葉が嬉しかったのは事実
「いつでもいいよ」
先輩はヒロトさんに向かって走っていった
「うわ…!」
もう何度目かわからない転倒。先輩の綺麗な桃色の髪も砂まみれになっている
「くそっ…」
跪いて土を握りしめる先輩に俺はとうとう駆け寄った
「先輩、もうやめて下さい!」
「何、言ってんだよ…やめたら、お前とサッカー…出来なくなるだろ…そんなの、俺が嫌なんだよっ…」
「…霧野先輩」
土を振り払い、先輩はヒロトさんのボール、ただ一点目掛けて走る
当の本人は余裕の顔
「何度きても同じだよ」
そんなヒロトさんに俺はニヤリとして言葉を投げかけた
「ヒロトさん!リュウジさんだよ!」
「え?緑川?」
単純なヒロトさんの地雷を踏んで出来た隙に、先輩は渾身の力で右足を振り出し、そのまま倒れた…