イナズマイレブン

□霧野乱丸
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「ねぇ!校庭で狩屋君がサッカーの試合やるんだって!」
「うそ!私見に行く!」
「私も!」



廊下を我先にと走る女子達の会話を耳にし、俺は2年教室の窓から校庭を眺めた


「霧野?何見てるんだ?」


神童も隣にきて校庭を見下ろす


「狩屋が試合やるんだってさ」


頬杖をつきながら言うと、眉を下げた神童が顔を覗き込んできた

「どうかしたのか?」

「え?どうかって…」

「今の顔、霧野らしくないから…」

「…っ…な、何でもない!」


自分では平然としていたつもりだったのに、幼なじみにはお見通しのようだ

けど、この気持ちを自覚したくなくて、神童にも自分にも嘘をつく





「はぁ…」

放課後の練習が終わり片付けをしている最中、俺は今日何度目かわからないため息をついた

その原因の1つが
練習中、ずっと俺の視界の端にちらついていた女子達だ

「狩屋君!お疲れ様!」

手を振られ、狩屋も愛想のいい笑いを向ける

「何か俺、すごくモテてません?」

「知るか…。さっさと片付けろ」

妙に嬉しそうな狩屋を見たくなくて、俺は逃げるようにコーンを運んだ


確かに狩屋のスポーツセンスに惚れ惚れする気持ちは分かる

けど俺はそれを


嫌だと思った


女が狩屋を見ていることが、
自分と並んでいるより、あぁして女と並んでいる方が自然に見えてしまうことが


嫌なんだ

どうしてこんなに心が乱される?

俺はなんて




「…女々しいんだ…」

「誰がですか?」

「!」

狩屋の声に顔を上げると、俺は既に学ランを着て、狩屋との帰り道を歩いていた

「あ、いや…」


「どうしたんですか?今日の霧野先輩、らしくないですよ」


━霧野らしくない


「どうしたんだろう、な…俺らしいって何だろう…?今まで俺は…どうやってお前を見てたんだっけ…?」

自分でも戸惑い、どうしていいかわからず、自重めいた笑いを漏らす

しかし狩屋は、いつもと変わらない表情で俺を見つめていた

「妬いたんですか?」


そう

ずっと、気付いても見て見ぬふりしていたこの気持ちは紛れもない


やきもちだった


「悪い…俺、

お前を女に渡したくない…!」

路上で狩屋を抱きしめると、心を乱されて、もう離したくなくなった

愛しくてたまらない


「俺だって、霧野先輩を他の男になんて渡しませんよ」


「大丈夫だ…俺は、お前以外のものにはならねーよ」


俺はこれからもずっと、こうやって乱されてしまうんだろう

こいつのことしか考えられない程に



            fin.

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