イナズマイレブン
□自慢の弟
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「白恋中をフィフスセクターから解放して欲しい」
突如現れた、元イナズマジャパン吹雪士郎は、俺たちの前で頭を下げた。
自慢の弟
練習後、俺はいつものように病院に来ていたのだが、兄さんの病室に入るなり、絶句した。
なぜなら
「それで!その後はどうなったんですか!」
「豪炎寺君の新必殺技が決まって、イナズマジャパンの勝利さ」
「うわぁ!やっぱり豪炎寺さんは凄いストライカーなんですね!」
……………………………。
そこには、吹雪士郎の話を熱心に聞く兄さんの姿があったから。
「京介、おかえり!今な、イナズマジャパンの吹雪さんにFFIの話をして貰っていたんだ!京介も一緒に聞こう!」
俺に気付くと、兄さんは目を輝かせたまま手招きをした。
「優一君の弟って、剣城君だったんだね」
「京介、知り合いだったのか?」
吹雪さんの言葉に、兄さんは目をぱちくりさせた。
「まぁ……」
短く返事をすると、俺はいつものように手土産を机の上に置き、花瓶の水を変える。
「いつも悪いな…」
「気にしなくていいよ。俺が好きでやってるんだから」
好きでやってる。
俺はそうすることで、自らの罪を償おうとしているのかもしれない。
「剣城君は、よく優一君のお見舞いに来るの?」
「はい。毎日のように来てくれて、部活に支障が出てないか心配なくらいで」
「そうなんだ。剣城君は有力なサッカープレーヤーだよ。まだ1年って聞いて、僕も驚いたよ」
「本当ですか!すごいじゃないか!さすが京介だ!」
「自慢の弟だね」
「はい!」
兄さん…俺、自慢の弟なんかじゃないよ。
ベッドの、車椅子の兄さんを見る度思い知らされる。
昔、自分が犯した罪を
「兄さん、喉渇かないか?何か買ってくるよ」
「ありがとう、京介」
何となく居ずらくなり、逃げる口実を作る俺。
そうやって俺は、兄さんからもサッカーからも逃げて
「それじゃあ、僕も一緒に行くよ」
俺はぎょっとして、立ち上がった相手に、露骨に嫌な顔をして見せた。
しかし、当の本人はそんなのお構い無しに、いつものやんわりとした笑顔を向けるばかり。
俺はそれを見ないように、顔を背けた。