うたの☆プリンスさまっ♪

□君だけのhappy birthday
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「翔くん、お誕生日おめでとう!」



君だけの
happy birthday




翔くんが部屋に入って来た途端、私は手にしていたクラッカーの紐を思い切り引いた。

パンッという音、弾け飛んだ紙吹雪まみれになった翔くんが唖然と立っている。


「……翔くん?」


顔を覗き込むと、水色の大きな瞳に私が映った。


「な、何だ…」

「今日は、翔くんのお誕生日だから!お仕事終わっててよかった。2人で…お祝いしたかったの…翔くん、生まれてきてくれて、私と出会ってくれてありがとう」

「花…」


一瞬顔を歪ませて、翔くんは私を思い切り抱きしめた。

想像以上に強い力と逞しい体に戸惑ってしまったが、その優しさと温かさは、確かに翔くんのものだった。


「サンキューな…誕生日なんてすっかり忘れてた。けど、俺が忘れてもお前が覚えててくれるんだな。本当、花に会えてよかった…最高の相棒だぜ!」

「…翔くん」

「今夜は…ずっと一緒にいようぜ」

「…うん」


ゆっくりと翔くんに身を委ねる。

ずっと仕事に忙しかった翔くんは、他のことを気にしている暇もなかったのかもしれない…

無理しないで

いくら私が言った所で、翔くんはいつだって

大丈夫だぜ

大丈夫じゃなくてもそう言う。


私が支えたいって思っていても、いつの間にか私が支えられていて


「すげぇ料理…花が作ったのか?」

「う、うん!口に合うかわからないけど、作ってみたの…」

「ばか。お前の料理が口に合わねぇわけねぇだろ」


テーブルに座り並ぶ料理に箸を進める翔くんを見つめていると、ニカッと笑いかけられた。


「うん!やっぱりすげぇ美味い!」

「よかった…!あ、ケーキもあるの!」


バタバタとキッチンに走って行き、翔くんの好きな苺のショートケーキを持ってくる。

さすがにケーキは作れなくて、市販なのが申し訳ないけれど…


「花…」

「蝋燭点けるね!」


色とりどりの蝋燭に明かりを灯し、部屋の電気を消した。

ふたりきりの部屋は一気に暗くなり、蝋燭の炎と私達の影がゆらゆらと揺れているだけ。

翔くんの隣に座り直し息を吸い


「happy birthday to you〜happy birthday to you〜happy birthday dear 翔くん!happy birthday to you…」


決して上手くはない歌だったが、翔くんはずっと私を見つめて聞いていてくれた。

顔に出来た影がいつもの彼の幼さを隠し、大人っぽく見える。



「翔くん、お誕生日おめでとう。こんな私だけど、いつも一緒にいてくれてありがとう。頼りないし、翔くんに助けられてばかりだけど…私、翔くんのパートナーでいられて…彼女になれて、すごく幸せだよ。よかったら…これからも一緒にいて下さい…大好き」


薄暗いからか、私は大胆にも胡座をかく彼の腰に抱きついた。

一瞬驚いた翔くんだったが、優しく私を抱きとめてくれて、頭や背中を撫でてもらえるのが心地良かった。


「一緒に決まってんだろ?俺の方こそありがとうな。けど俺には、ただお前がいてくれるだけでいいんだぜ?こうして祝ってくれたり特別なことをしたりすることも嬉しい。でも、いつもみたいに他愛ない話しして、手繋いで、抱き合って、キスして……それだけで幸せだ。花だから…なんだろうな」

「…翔くんだから、私も…んっ…」


顔を上げた途端、言葉の途中に熱い唇が落とされた。

啄むように、角度を変えて、何度も何度も重ねられ
私の舌も、翔くんの舌にされるがまま。

それが幸せ過ぎて、気付くと目から涙が流れていた。


「んっ…」

「…んぁ…っ」


定番の蝋燭を吹き消すことも忘れてふたり。

ただお互いを貪る厭らしい音だけが部屋に響いている。



しばらくして唇を離しても、ふたりは幸せの糸で繋がっていた。

翔くんは愛しむような瞳で私を見つめ


「……なぁ、」

「ん…?」

「お前が欲しい」

「え…」


意味はすぐにわかった。
わかったから、思わず聞き返してしまったのだと思う。


「あ…翔くんにね…!プレゼントが…」

「プレゼント。花が欲しい」


テーブルの下の箱に伸ばした手を掴まれてしまった。

部屋が暗いにも関わらず、恥ずかしさで熱くなった顔を伏せ


「私…なんかでいいの…?」

「花がいい」


ゆっくりと視界が反転し優しく倒されると、天井を背景として、いつもより大人っぽい翔くんの顔が見えた。


「花、愛してる」

「…私も…愛してる」


呟き合い、翔くんがふっとケーキに息を吹きかけると、部屋が黒に包まれた。




            fin.


翔くん、おめでとう!
男気全開な翔くんが大好きだよ!
これからも頑張ってね!

20120609

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