うたの☆プリンスさまっ♪

□a cappellaに
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私、作曲家に向いてなかったのかな?

半日振りに外に出てみると、空は雲1つない夜空で、月星たちがこんな私を励ましてくれているようで、涙が溢れた。

これは何の涙だろう?

曲が作れなくて悔しい?
レンさんに申し訳ない?

それとも…


「!?」


不意にどこからか、歌声が聞こえてきた。

アカペラで、綺麗に透き通るように、まっすぐ歌われる。

その歌声に引き寄せられ歩いて行くと、水面に映る月明かりが反射して、彼をキラキラと照らしていた。

久し振りの彼の姿だったからかドキドキしたが、それよりも彼が今歌っている曲が私のものだということに、何とも言えない感情が溢れてくる。

しばらく見蕩れていると、歌い止めた彼と目が合った。

その憂いを含んだ眼差しに、胸が跳ねる。


「花!?」

「翔くん…!ご、ごめんね…立ち聞きするつもりじゃなかったんだけど…」


1ヶ月振りで気まずい…。

でも、私は翔くんの心意が知りたくて、怖ず怖ずと問う。


「…私の曲…」

「あ!えっと…急にお前の曲歌いたくなって、さ!ダメだよな、こういうの……悪い」


綺麗な水色の瞳が戸惑うように泳ぐ。

ばつが悪そうに俯いてしまう翔くんを前に、私の視界はどんどん歪んでいった。


「…ううん、嬉しい。翔くんが、私の曲…覚えててくれ、て…歌って、くれて…っ」

「花…っ」


この1ヶ月、幾度と込み上げてきた涙が今、熱くなって翔くんの腕の中で零れた。


「翔くん……」

「ばーか。俺様が忘れるわけねぇだろ?」


翔くん。

名前を呼ぶ度、とめどなく流れていく涙。

その時、私は気付いた。
どうして、レンさんの曲が作れなかったのかに――


「花」


一瞬強く抱きしめ、翔くんは肩を掴んでまっすぐに私を見つめた。


「好きだぜ。俺が歌えるのは、お前の曲だけだ」

「…私も、翔くんの曲しか作れないよ。…翔くんが好きだから」


言葉を言い終えると、私達は微笑み合い、どちらからともなく目を閉じた――



a cappellaに
私の曲をのせて





            fin.
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