うたの☆プリンスさまっ♪

□a cappellaに
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「お!いいじゃん、今の感じ!もう1回やってみようぜ!」

「うん!」


翔くんがいつもの明るい笑顔で言い、まっすぐに歌い上げる。

いつも翔くんは、何事もダイレクトに伝えてくれるからそれが歌にも重なって、聞いていると胸が温かくなる。


「やっぱ、花の曲歌うの気持ちいいな!」

「ありがとう。私も翔くんの歌、すごく好きだよ!」


私が素直な気持ちを口にすると、翔くんは顔を赤くしてあたふたする。

そうすると、もともと携わっている可愛さがますます際立つ。


「す、すすす好きって!!!!!…あぁ、歌な!だよなっ、サンキュ!」

「?」

「俺も好き、だぜ!?花の曲。格好いいし、歌い易いし、心にくるっつーか!」


私の書いた五線譜を優しく見つめる翔くんの姿に、目頭が熱くなる。


「翔くん……。私、もっともっといい曲作って、翔くんに歌ってもらえるようにするね!」

「おう!そんじゃ、俺ももっともっと上手く歌えるようにするから!」

ねぇ、翔くん?

私、翔くんとパートナーでよかったよ。

こんなに私の曲を大切にしてくれて、歌ってくれて…ありがとう。

これからも、ずっとパートナーでいようね。

























3日後、私と翔君はパートナーを解約した。

























レンさんとパートナーを組んでもうすぐ1ヶ月。

にも関わらず、まだ私は曲が書けていなかった。

このままじゃだめだって、パートナーはレンさんだってわかってるのに、頭に流れてくる曲は


――お前も好きだぜ!?花の曲


「だめ………!」


もう何枚目かわからない五線譜を丸める。

私は、何をやっているんだろう……。

みんなは、既に新しいパートナーの曲を作り、レコーディングまで行っているというのに…。

…翔君だって。

こんなことをしているのは、私だけ――



今日こそはと思い、朝までかかって作り上げた曲をレンさんに聞いてもらった。

しかし、その曲が最後まで聞かれることはなく、代わりに冷たい視線を向けられた。


「これは一体誰の曲だい?俺のパートナーなら、もっとちゃんとした曲を作って欲しいよ」


すみません…、そう言って俯くことしか出来なかった。

自分が情けない、恥ずかしい。

私はついにその場を逃げ出し、部屋に飛び込んだ。

レンさんと周りの視線に耐えきれなかったのもあるが、その中に1番見られたくなかった人がいたからだと思う。

こんな姿、彼には見られたくなかった。
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