うたの☆プリンスさまっ♪

□「会いたいよ」が言えないの
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*telephone sex注意!



ピピピピッ,,,


「もしもし!」


午後11時10分。

携帯が光って,001秒の動きで通話ボタンを押すと、電話の向こうからくくっと喉で押し殺したような笑い声がした。


「1コール…いや、0,5コールとはどんな反射神経です?それとも、そんなに私の声が聞きたかったのですか?」

「だ、だって…!トキヤからの電話3日振りだし、びっくりしちゃって…」


小さな嘘だ。
毎日毎日、携帯と数時間に渡るにらめっこをしていたなんて、言えるわけがない。

仕事が忙しく、ロケで地方を飛び回っているトキヤは、自分の睡眠時間すらないだろう。

そんな中で必ずメールをくれるし、夜には電話もくれる。

たとえ会えなくても、私はそれだけで良かった。


「3日…そうでしたね。あなたの声を聞くのは、何年振りかと思いました」

「ふふっ…そんなに?今、大丈夫なの?」

「はい。今日は撮影が早く終わったので」

「そうなんだ」

「……」

「……」


沈黙。

あれ?久し振りに声が聞けたんだから何か話さなきゃ…でも、頭が真っ白だ。

いつもなら、トキヤが返事をする暇もないくらいのマシンガントークなのに…どうしたのかな?


「花?」

「え?あ……いつ、帰って来られそう?」

「そうですね…すみません。今月は帰れそうもありません。ですが天候にも恵まれ、このまま順調に撮影が進めば、来月には帰れるかもしれません」


と言いつつ、もう2ヶ月は顔を見ていない。

私は、よりによって何ていう質問をしたんだろう。

いつ帰るの?いつ会えるの?

なんて、女々しいじゃない…トキヤに心配かけちゃうじゃない…

一番大変なのはトキヤなのに、私は「頑張ってね」なんてありきたりな言葉しかかけられない。



「花?」

「ご、ごめんなさい!なんか私…うとうとしてた。トキヤも疲れてるでしょ?もう寝よう!」


わざとらしい空元気。

折角声が聞けたのに、今日の私はおかしい。

これ以上トキヤと話せなくなって、強引におやすみ、と電話を切ろうとした時


「花!」


焦ったような声に、思わず指が止まってしまった。


「私は、まだ切りたくありません」


うん。私だってそうだよ。
もっと、ずっと話していたいよ。


「今日は、一緒に眠りましょう」


意味がわからなかった。

きっと普通だったら、出来ないじゃん、と笑っていたかもしれない。
けど、私はうん、と頷くと自然に電話を耳に当てたまま、電気を消し布団に入っていた。


「寒くないですか?」

「うん。大丈夫…」


目を閉じると、トキヤがそっと抱きしめてくれた。


「花、愛していますよ」


ちゅっと綺麗なリップ音が聞こえ、真っ暗だからか余計恥ずかしくなってしまう。


「…私も」

「なら、キスをして下さい。誓いのキスを」


その甘い声に、全身が痺れた。

しばらくの沈黙の後、私もトキヤのように上手くはないけれど、ちゅっとキスをした。


「ふ…そこじゃなくて、ちゃんと口にして下さい」

「え…!?」


ほら、もう一度、とたまに意地悪なトキヤ。

そんな所も好きだけれど


「……ちゅっ」

「はい、よく出来ました」


満足そうに笑うトキヤは、これだけで本当に満足なのだろうか?


「トキヤー…」

「はい」

「もっと、ちゅーして…」


いや、不満足なのは私の方だ。


「まったく、甘えん坊さんですね。…いいですよ。いくらでも……ん」

「ん…」


ちゅ、ちゅ、と色々な場所にキスを落として来るトキヤに合わせて、私からも甘い声が出る。



「…ん、やぁ…トキヤ…」

「もしかして、電話で感じているんですか?」

「言わないでぇ…」


だって、電話とわかっているのに、すぐ隣にトキヤがいるような気がするんだもん。
トキヤの唇と本当に重なっているような気がするんだもん。


「可愛いですね。ますます、触れたくなります」

「あ…トキヤ…」

「その白くて柔らかい体。きっともう、アソコは…」

「…ぃや…」


その通り、もうしっとりしていることを見透かされて恥ずかしい。

けど、その思いと反比例するように揺れる私の腰。

寂しくて、焦れったくて、いつの間にか目からは涙が流れていた。

わがままなんて言わないから、許して――


「…トキ、ヤ…っ」


禁句の5文字を飲み込んで


「…触ってぇ」

「花…」

「…あ、ああ…そこっ…」


トキヤの声に合わせて、自分の指を自分のナカにツプッ…と入れる。


「気持ちいいですか?」

「もっ…と」

「ええ…もっと、奥まで…」

「ああっ…!」


ぐぐっと差し込まれる指。

すると、トキヤがゴクリと唾を飲み込むのが聞こえた。


「…トキヤ、大丈夫…?」

「っ、私も…ですよ。あなたのそんな声を聞いて、平気でいられるわけがないでしょう…?」


余裕のないトキヤの声が、いつもより艶っぽく聞こえた。

トキヤに触れたい。気持ち良くさせてあげたい。


「トキヤ大好き。…私も、トキヤにしたい」

「…花、ん…」

「あん…トキヤ…!」


お互いに声が上擦り、ゴソゴソと忙しなく摩擦音が聞こえる。
おまけに、どちらのかもわからないギシギシというベッドのスプリングの音。

それだけで、私は幸福感で満たされていた。


「トキヤ、トキヤ…っ」

「…く、花…!」


ああ…今、トキヤと私は繋がっている。

はぁ、はぁと荒い息遣いで加速していく行為――

しばらくそれが続いた後、くぐもった声で、同時に絶頂を迎えたことがわかった。

私は、一人汗ばんだまま、ぐったりとベッドに横になっていた。
それはきっと、トキヤも同じ。


「花」

「んー…?」


携帯を耳に当て直す。
疲れか、安心か、瞼が重く下がって来ていた。


「我慢なんてしなくていいんですよ」

「え…」

「花が辛いなら、私も辛いのですから…。我慢しないで」


不意をついたトキヤの言葉に再び涙が溢れ、枕に落ちた。


「来月、必ず帰りますから。待っていて下さい」

「うん…。早く、帰って来てね」


確かな強い言葉。

私は、寄り添うように携帯を抱きしめ、目を閉じた。

いつしかトキヤの携帯からは、愛おしい小さな寝息が聞こえて来ていた。

それにそっと身を寄せ、目を閉じた。



「会いたいよ」が
言えないの




fin,


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