うたの☆プリンスさまっ♪

□一泊二日
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*back please princess!


「ごゆっくりどうぞ」


女将さんは、三つ指をついて優雅な仕草で襖を閉めた。

二人っきりの和室のテーブルには、広々と日本料理が並べられている。


「美味しそう!」


しかし、感嘆の声を上げた花は料理には手をつけず、向かいに座るボクをみつめてきた。


「どうしたの。食べなよ」


「でも、こんなにたくさん…部屋も綺麗だし…その…安くないでしょ…?」

「そういうの気にしないでくれる?これは、花の為に用意したんだから」

「でも、藍くん…」


それでも食い下がる花にボクなりの微笑みを浮かべて


「そんなに気にするなら、体で返してくれればいいよ」


途端に白い頬が染まり


「か、かかかかか体って!?」

「嫌ならさっさと食べなよ」


観念して箸を持つ花に複雑な気持ちだが、そんな所も柄にもなく可愛いなと思ってしまう。


「美味しい!」

「そう。よかった」


珍しく休みを貰ったボクは、その貴重な休みを彼女と過ごそうと花を誘って旅館にやってきた。

街に繰り出すのもよかったんだけど、レイジが

―勿体ないよ〜!!!折角なんだから二人っきりで温泉に行くべきだよ、アイアイ!女の子は、温泉喜ぶよ〜あ、喜舞床温泉がいいよ!絶対、喜舞床温泉ね!

かなり胡散臭かったけど、そう言われたわけだし来てみたけど


花は変なところ気を遣うから、さっきみたいにお金がかかるんじゃないかとか仕事が休みの時くらい体を休めたらどうかとか、そんなことばかり気にしているようだ。

彼女の為のものなのに、花は楽しめているのだろうか。


「んー、お腹一杯!ごちそうさまでした!」


食事後は、そんなことも感じさせないくらいの笑顔を浮かべてくれた。


「疲れたんじゃない?温泉入って来たら?」

「うん!温泉入る!藍くんは入らないの?」


無邪気に着替えを用意している花。


「一緒に入って欲しいってこと?」


我ながら意地悪な言い方だと思う。

でも花は期待通りの反応をしてくれる。


「え!?あ…、えっと…」

「いいから、早く入って来なよ。折角だからボクも入ろうかな」

「そ、それって…!」

「別に決まってるでしょ」


ほっと胸を撫で下ろす姿に、思わずむっとした。



フラフラする足取りで温泉から上がり部屋に戻ると、二枚用意された布団の上に花は座っていた。

その隣に力なく横になる。


「藍くん!どうしたの!?」

「すごく熱いんだけど。それなのに周りはずっと上がらないで、馬鹿じゃない?」


どうやら、温泉は好きになれないようだ。


「のぼせちゃったの!?大丈夫!?」


クラクラする頭に花の手が乗せられた。

目を開くと、湯上がりで火照った花と目が合った。

少し濡れた髪、赤い頬、着物の袷から覗く肌全てが、何だか色っぽくて


「全然大丈夫じゃない。…ねぇ、キスして」

「え…なん、で!?」

「キスしてくれたら治る」


額に置かれた手を引くと花は体勢を崩し、ボクの上に倒れた。
逃げられないように、しっかりと腰に手を回す。


「ねぇ。今日全然してないじゃん」


少し拗ねたように催促してみると吹っ切れたように、真っ赤な顔の花が目を閉じて顔を近付けてきた。

それに合わせて、ボクも目を閉じる。

吐息が合わさり、そっと唇が重なった。

しかし、恥ずかしいのかすぐに花は顔を上げてしまった。

不満なボクは、見つめ合っていた目をもう一度閉じ、顔を引き寄せた。

ボクの上の花も大人しく、されるがままだ。


「…ん……ちゅっ」


隙間から舌を差し入れると、花の方から積極的に舌を絡めてきた。


「…ん」

「んぁ…」


厭らしいリップ音が和室に響く。

段々、花の体から力が抜けて体重をボクに預けてきた。
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