うたの☆プリンスさまっ♪

□キスしていい?
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「ふふっ、藍くんと初めてのお泊まりだね」

「そりゃそうでしょ。毎日仕事で寝てる暇もないんだから」


明日も仕事だし、とちょっぴりご機嫌ナナメな藍くん。

それもそうだろう。

今日のお泊まりも私の我が儘で、無理を言って部屋に押しかけたようなものだから。


「藍くん、ごめんね…私、忙しいこと知ってるけど…もっと藍くんと一緒にいたいなって思って…少しでも藍くんといたくて…」

「何謝ってるの。そんなの僕も同じなんだから、そう思うなら素直に言いなよ」


言葉とは対照にそっと握られた手から藍くんの優しさが伝わってくる。

そんな格好良くて、優しくて、でも厳しくて、ちょっぴり不器用な藍くんが私は大好きだ。


「ありがとう、藍くん。今夜はずっと一緒にいて下さい」

「花。それどういう意味かわかってる?」

「え?」

「知りもしない言葉をそう簡単に使わないこと」

「何が?もう、藍くん…」


言葉の意味がよくわからなくて藍くんの顔を覗き込むと、透き通るような瞳と交差した。

途端に目が離せなくなる。


「ねぇ」





キスしていい?






「え…」

「嫌?」

「い、嫌じゃ…」

「正直に言っていいよ。花もロボとキスなんてしたくないだろうし」


いつも通りの無表情、彼らしい言葉だったが、悲しくなってしまった。

だって私は


「私は……今まで藍くんをロボだなんて思ったことないよ」


バッテリー切れになった時だって、腕が取れた時だって

私の大好きな


「藍くんは藍くんだもん」


そう言ってただ真っ直ぐ見つめていると、頬に冷たい手が添えられた。


「花」

「藍く………んっ」


顔を傾けて重ねられた唇は、やはりロボなんてものではなく、"藍くん"のものだった。

柔らかく、優しく私を包んでくれる。

しかし


「ん!」


つい苦しくて、藍くんの胸を押すとそっと唇が離された。

肩で荒く息をする私。


「ご、めんね…苦しく、て…」

「まだ1分も経ってないじゃない」

「1分も無理、だよー…」


しょぼんと肩を落とすと、藍くんは


「今、花が息を止めていられた時間は27秒。あまり苦しくないように20秒ごとくらいには息吸わせてあげるよ」

「に、20秒!?」

「いくよ」


藍くん、と名前を呼ぶ前に甘く唇が重なった。

そして、角度を変えていくと同時に言葉通り20秒、丁度私が苦しくなる前には器用に唇の隙間から藍くんは空気を入れてくれた。


「んっ…ぁ」


ゆっくりと深くなっていく、私の私だけの藍くんからのキス。

その規則正しいキスが気持ち良くて、力が抜けた私の体が後方に倒された。


「…ん、はぁ…」

「ぁい…く…」


藍くんは今、どんな気持ち?

私は、すごく幸せだよ。


「花、いい…?」

「藍くん…」

「ボクは、キミと手を繋いだり下らない話をしたりしているだけで幸せなんだ」


うん。私もだよ。


「でも、それだけじゃ足りない。キスだけじゃ、足りないんだ。もっと深く、繋がりたい」


藍くんの言いたいことはわかったし、私も同じ気持ちだった。

だから答えは一つ。


「…私も、藍くんと繋がりたい」


そう言うと、藍くんは嬉しいような悲しいような、複雑な顔色をして見せた。


「ボクはロボだから、花を幸せには出来ないよ。それでもいいの?」


それは、私も知ってるよ。
でも、


「今のままで十分幸せだよ」


精一杯の笑顔を浮かべると、藍くんは隠すように顔を私に埋めた。


「ねぇ」





キスしていい?
キミを大切にしたいから




            fin,

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