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□おとなのしるし
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早朝にも関わらず、その男は電話に出てくれた。
『はい、手塚です』
「手塚か?忍足や」
『忍足か、どうした』
電話の相手は手塚。
会社の同僚でもあり、うさぎの飼い主の先輩でもある。
「あのな、わかしの様子がおかしいねんっ」
『わかし君が?』
俺はわかしの様子を手短に伝えると、手塚の答えを待つ。
何か重い病気だったらどうしようか…嫌な想像ばかりが頭を駆け巡る。
緊迫した空気の中、手塚がゆっくりと口を開いた。
『‥わかし君は体中が痒いと言ってるんだな、むずむずするとも』
「ああ、それって一体‥」
『発情期に入ったんだろう』
発情期。
動物ならあるべきそれにひどく動揺する。
『うちのあとべと同じ症状だ‥間違いないだろう』
「そんで?どうしたら良えねん」
ソファにくたりと横たわるわかしを見つめながら、助ける方法を聞き出そうとする。
『‥人間と同じだ』
「は?」
『だから、人間の男と同じ‥溜まれば』
「抜く?」
『そうだ』
わかしはきっと初めてのそれに戸惑っているのだろう…抜き方を教えてやれば大丈夫だと手塚は言った。
ケータイを切り、ふるふると震えるわかしの傍に腰を下ろす。