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□恋亡骸 〜第二綴〜
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「若」
朱塗りの柵越しに今日も彼はやって来た。
カチャリ、と鍵を開けて座敷牢の中へ忍足が入ってくる。
日吉は一瞥すると、視線を下に落した。
「やっぱり食べてへんかったな」
はあ、と大きく溜め息を吐き、冷め切った粥を蓮華で掬い日吉の口許へ運ぶ。
「はい」
「‥」
にっこりと笑う顔に心底嫌悪を覚える。日吉はきゅっと唇を結んでそれを拒んだ。
「若‥」
「…要りません」
蓮華で唇をつつかれるのも嫌なので、日吉は顔を逸らす。
忍足はフッと笑って、蓮華の粥を口にした。そして、日吉の顔をこちらに向けさせる。
「なにす…っ‥んぐ!?」
いきなり合わせられた唇に日吉は目を見開く。舌と共に入れられたのは先刻(さっき)の粥。粥特有の粘り気が気持ち悪い。忍足の舌は否応無しに粥を喉に押し込んでいった。
「くっ‥はぁ…っ」
小さく日吉は咳込む。
忍足はにやりと笑い、その背中を擦る。