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□Ein Spiel von Lilith
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「好きだぜ、日吉」
「好きや、日吉」
跡部と忍足・氷帝の帝王と策士にそう告白され、日吉は困ったように目を伏せた。
これで何度目の告白だろう……いつまでも煮え切らない自分が悪いのだが、どちらも捨てがたい麗人達に囲まれては、戸惑うというもの。
優しく微笑む彼らを交互に見つめる。
「あ、あの……俺にはやっぱり」
「アン?また決めらんねえのか」
「良え加減に決めてくれんかな‥俺らもそう待たらへんで」
忍足は中指で眼鏡を上げ、跡部は腕を組んで溜め息を吐く。
日吉はそれにきゅっと拳を握り締める――だって、本当に決められないほど二人とも美味しそうだから。どっちかを手離すなんて、そんな勿体無い真似出来ない。
いや、決められないなら、どっちも手に入れれば良いのではないか?
日吉の唇が妖しく歪む。
そして、彼らが好きだという可愛らしい子羊の顔をして笑い掛けた。
その笑顔に二人はつい見蕩れてしまう。
「「日吉……?」」
「じゃあ、三人で付き合いませんか」
目を丸くする忍足と跡部の手を取り、それぞれの手の甲に日吉は可愛らしい口付けを施す。
これが、愛欲遊戯の始まりだった。
Ein Spiel von Lilith
偶に日吉と忍足は跡部の屋敷へと招かれることがある。
もう何度目になるだろう‥常軌を逸したアソビに興じるのは。
固い表情で電車に乗る日吉に忍足は至極先輩らしい表情で大丈夫だと囁く。
彼は日吉の恋人であるから、優しく優しく髪を撫でて宥めた。
「緊張してんの?」
「べ、別に‥」
「嘘言いなや。いつもより汗掻いてる」
テカテカと光る日吉の鼻や頬に忍足は昨日抱いた女子が置いてった脂取り紙で顔を拭ってやった。敏感肌に紙の刺激は痛いらしく不機嫌そうにふんと鼻を鳴らされる。
「だって、跡部さん俺のこと嫌いだろうし‥」
「何言ってんねん。そんな訳ないやろ」
「じゃあ、どうして忍足さんみたく優しくないんですか?」
これだから子供はと言いたくなったが、あえて忍足は口を噤んだ。
跡部がどう思われていようが関係無い。最終的には日吉が自分を、自分だけを好きになってくれれば良いのだ。今のところ日吉はこちらに気が有るようなので、このままリードさせて戴く。
先手必勝、てな。
狡猾な彼は俯く日吉の傍でにたりと嗤った。