短編いろいろ
□願い
1ページ/1ページ
...........
「元就」
何十、何百、何千、何万と。
私はその名前を呼んだ。
優しく、冷たく、怖く、意地悪く、愛おしく。
いろんな想いをその名に乗せて呼んだことを、あなたはきっと知らないだろう。
ねぇ元就、私はあなたのことを
覚えているよ?
チカ姫のコトダマなんて、この莉子ちゃんに効くわけないじゃない。
何が孤独よ、何が一人よ。
この私の意志を捩曲げようなんざ、元姫若子の分際で生意気だっての!誰がアンタ達のお姉ちゃんやってたと思ってんのよ、そりゃ泣き虫な姉ちゃんで頼りなかったかもしれないけどさ…と、とにかくっ、500年早いっつーの!
…なんて、何偉そうにしてんだろうね。結局何もできなかったくせにさ。
元就がいなくなったあと、チカ姫の様子がおかしくて。
問い詰めたらこんなことになってて。
私ね、泣かなかったんだよ?
元就ってば、私が泣くと煩いって言って困り顔するんだもの。
最後までみっともない姿でいたら、貴方の日輪が曇ってしまうから。
だから、泣かなかったの。
それからチカ姫。
これはどうしていいのか私もわかんなかった。
昔みたいに笑い会える、少し期待したの。でも無理だよね、元就がいないんだもの。
私は静かにチカ姫の話しを聞いたよ。
最初は誰だかわかんないくらい怖くて、私震えてたかもしれない。
でもね、黙って一言一言紡いでいくチカ姫の眼が、とても曇っていたから。責めるなんてことできないよ、それが例え元就であったとしとも同じこと。
守りたい人達の幸せを願った張本人達がさ、こんな結末なんてあんまりじゃない。
私は元就みたいにザビー教の信者でもなかったから、勝手な想像になるんだけど。
もし神様がいるとしたら、
「あなたはなんて意地悪なんだろうね」って。
強くは言えないけど、神様、私はあなたが苦手だよ、ってさ。
ねぇ元就。
どんな強い呪いが立ち塞がっても、どんな意地悪な神様が邪魔をしても
私は何度でも元就を見つけだすよ。
自我独尊なんて、恐れ多いのだけど、やっぱりそれが私の性にあってるみたい。
そうしてまた笑われるのかな。…笑って欲しいな、どんな理由でも、あなたの笑顔は私の心をポカポカ暖かくしてくれるんだ。
だから、お願いだよ。
「元就」
私のことを思い出さなくていい。優しくしてくれなくてもいいから。
たった一度でいいの、私の名前をあなたの声で呼んでくれませんか。
そうすれば私も、現世で生きていける気がするんだ。
あなたの側にはいられなくても、私はあなたのことを想っているから。
皆があなたを覚えていなくても、私はあなたの過去も現在も全部忘れず覚えているから。
どうかお願い、私に希望を与えてください
『願わくば』
でもね
欲を言うなら
あなたの側で生きたいんだよ
******
瀬戸鬱ルートをなんとか現世でハッピーにしたいと思って書いたのですが
なんらハッピーになってない件(^P^)
一応現パロ…です!