猿飛

□常連客
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あ、今日も来てる



カウンターの一番奥の席に座る一人のお婆さん。
ブレンドコーヒーをすすりながら、紅茶クッキーをゆるりぬるりと口に運んでいる。
それから窓の外に視線を移したり、店内をぼんやりと眺めたり。

たまたま目が合ったのでニコリと微笑むと、会釈しそっと目線をはずされて。



「照れ屋なのかな」


「どうかしましたか?」


「あ、篠宮さんお疲れ様。あの人ね、よく来てくださるんだけどあまり目を合わせてくれないんだよなあ」


「…常連様、ですか?私は初めてお会いするお客様ですが」


「ここ最近ずっと来ているよ。昨日も来ていたし」


「えっ…気がつきませんでした」



篠宮さんはひどく驚いたあと、落ち込んだ様子だったので「気にしなくても大丈夫」と言って慰めた。
そもそも昨日とは『見た目』が違うのだから、わからないのも当然のことで。



「ほらほら、お客様がお帰りになるよ」


「あっ!はい」



篠宮さんはパッと顔をあげお客様の方へ小走りでむかう。


一方のお婆さんはというと、相変わらず店内をぼんやりと眺
めていた。
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