猿飛
□意地
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優季ちゃんのようすがまたおかしい。
「あの」
「ちょっといいですか?」
「すみません、少し聞きたいことが」
「あ、こっち来てください」
「あのう」
「……」
「あの、すみません」
「……なんで」
なんで名前で呼ばないの?
前なら五月蝿いくらい「猿飛さん、猿飛さん」って俺様のことを呼んでいたのに。
『佐助さん』
呼び方が変わってからまったくだ。バイトの終わる時間に迎えに行ったときにはもうこんな状態。よそよそしいって程でもないけど…極端すぎて気味が悪い。
なに、なんかした俺様?
「優季ちゃん」
「あ、すみませんがこのビンの蓋開けていただけますか?」
キュポン
「おお、ありがとうございます。助かりました」
「はいはーい…ってそうじゃなくて
」
「はい?」
「なんで俺様の名前呼ばないの?」
「え」
いい加減このかんじにウンザリしたためはっきり問いただすことにした俺様。優季ちゃんはというといつもの無表情で
「呼んでますよ」
「嘘。ア
ンタ極端すぎて分かりやすいんだよ。さっきからなんなの」
「…たまたまです」
「あー」
いいよもう。
あくまで誤魔化しきろうとする優季ちゃんに対し、俺様のいわゆる『意地悪心』がくすぐられた。
そうくるなら、こっちはこっちで好きにするぜ?