猿飛

□仮面
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「何にも無かったね」

「そう、ですね」

「ま、俺様はわりと楽しかったけど」



私達はコンちゃん(MYパソコンです)に頼るも思ったような情報を得られず、次の対策を練りました。
かといってすぐに名案が浮かぶでもなく、フと

「ならば他の方々の動向を真似すればいいのでは」

などと思いつき、我ながら妙案だと携帯を開きます。そしてお気に入り夢小説サイトに助けを求めるべくし文章を読み返しました。ああ政宗さんカッコイイで…ゲフン、いけない危ない。

私は『図書館で情報集め!』という展開に注目しました。メジャーではありますが、確かにここなら何か見つかるかもしれません。
私達もそれに便乗し、図書館へ足を運んでみることにしました。

…が、期待は見事に裏切られることになります。やはり情報は特にありません、そうそう上手い具合にはいきませんよね。

残念ながら、木の幹から不思議な光…なんて、竹取物語のアレくらいしか似たようなものが見つけられませんでした。

私がうなだれる隣で猿飛さんは写真が多く載った料理の本を眺めています。字が読めないので、写真で過程を把握しながらページをめくっており、その姿は客観的に見てもやはり眩しいです。美人さんは何をしても華がありますね。

なんやかんやでしばらく格闘するも、やはり欲しい情報と出会えることもなく。
帰り際に「歴史書が読みたい」と猿飛さんがおっしゃられたので、何冊か分厚いものを借りて帰宅しました。一人でも読めるように特訓しなければ。



「いろんな書物が集まってるんだねぇ」

「はい。わりと何でもありますよ、貸し出しもできて便利ですし」

「俺様、コイツより図書館の方が好みだわ」


コイツ、とはコンちゃんのことを指しているようです。なんだか敵対心を抱いているようですね。


「…とりあえず文字が読めるようにしましょう。そうすれば情報収集にも少なからず役に立つかと」

「そーだね」


私と猿飛さんは借りてきた本、紙、ペンを用意してリビングの机に身を寄せます。
そして『猿飛さん文字読み訓練』を実行しました。










「……」

「えーと、『私は葱が好きです、食べるのも育てるのも、愛でるのも大好きです』…で合ってる?」

「…驚きました。完璧ですね。」

「俺様物覚えいいからね〜。ていうかこの例文何なの」


物凄く右目の旦那意識してるよね。
と猿飛さんが呟き次の問題を解く隣で、私は心底感心していました。


ほんの数時間で、ここまで理解が出来るものなのでしょうか。


最初なかなか苦戦し、少しずつ文字をなぞっていました。しばらく歴史書を眺めて、紙に書き取るなどしていましたが、当人はしっくりこない様子。
あまり効率がよくないことに猿飛さんが歯痒そうにしておられたので、興味の沸く物から手をつければいいのではということに。

休憩を挟み、家にあった料理本を片っ端から持ち出します。
そして、それらを用いて文字を読む練習に取り組んでからは、猿飛さんは驚異の学習能力を発揮しました。

先程まで手こずっていた文字も含め、一冊あっという間に解読できるようになったのです。

猿飛さんいわく、「写真と照らし合わせながら意味を考えれば、わりと覚えやすい」そうです。

確かにその通りだとは思いますが、それでもあまりにも早い飲み込みに私は驚くばかり。まだ南蛮由来の単語はピンとこないようですが、これなら一人で簡単な書物であれば手に取ることが可能でしょう。


「忍さんは本当に頭が良いのですね、一般人にはなかなかできることではないですよ」

「お仕事柄、暗号解読とかいろいろあるから。それに比べれば易いね」


猿飛さんは辞典をペラペラとめくりながらそう言います。サラッと言いますが、本当に凄いことだと自覚はなさそうですね。


いつのまにか一人で書物に手を伸ばし始めた猿飛さんを見、私は静かに息を漏らします。それは安心のため出たものなのかはわかりません。
胸の奥が一瞬、チクリとしたのは気のせいでしょうか。

とにかく、私が居なくても大丈夫なようです。


真剣に文字の羅列を目でなぞる猿飛さんの邪魔にならないよう、私はゆっくりと腰を上げます。
そして静かに退室し、ホットココアをいれるためキッチンへ向かいました。




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