猿飛

□待ち人
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「明日、告白するんだ。」



仮卒一日目の朝。
そう言ったのは一人の少女。


妙に意気込んだ、ただ少し異様な笑みを浮かべて。


唯一無二の幼なじみの言葉を前にして、キョトン顔の男。


それから少しして、「そっか」と一言。


いつもの表情で、何の代わり映えもない幼なじみに対し、少女はひどく複雑そうな顔をした。




「何も、言わないんだ」




内心、妬いてくれるに違いない

そう踏んでいたのだ。


今までずっと側にいた幼なじみが離れていくのではないか…

そんな風な危機感を覚えるんじゃないかと考えていた。
かといってそれに深い意味などない。単にどういう反応が返ってくるのか興味があっただけなのだ。


しかしそんな自分の思惑に反し、幼なじみのあっけらかんとした態度に不快感が込み上げる。



もっと他に、何かあるだろう。



喉元まで込み上げるそれを堪える。


なんだこれ、悔しい。



彼女の頭をそれが占領する。

実を言うと、告白するというのもデマカセだったのだ。



そんなこんなで何一つ思い通りにいかない男に、憤りを感じるわけで。




「おもしろくない」



全くもって。


不意に目元が熱くなるのを感じ、思わず顔を背ける。



ああ、馬鹿だ。こんなの自滅だ。


どうにもいたたまれなくなり、背を向けた。

無言が続く中、そのまま帰ってやろうかと思案していると


フと、落ち着いた声音が耳に触れた。





「いいよ、俺様待ってるから。」




成功しても、しなくても。




少女はパッと振り返る。
そこには、優しい笑顔の彼がいて。




胸が、高鳴った。















(俺様んとこしか、アンタには無いから)





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