想いのカケラ

□序章
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「あーあ、つまんねー」



男はぼやいた。



というのも今日飲む約束していた相手が、急用で来られなくなったのだ。



「まあしゃーねんだけど、今日に限って女もつかまんねーし…どーすっかなぁ」



男が声をかければどんな女でも着いてきた。



しかしどういうわけか、今日に限って女がつかまらない。



男は途方に暮れていた。



 ―ぜ――そば―いる・・・



「ん?何だ?」



 ――より―さ・・・



微かに聞こえてくる声に男は耳をすませた。



「これ・・・歌、か?」



誰かが歌っている。



男はふらりと声が聞こえる方へと足を向けた。



だんだんと大きくなる声。



 ――生まれ変わったら桜の下でまた逢いましょう



切なげに紡ぎだされる歌。



 ――きっとその時には笑って永遠を誓おう



誰かを想う、歌。



 ――あなたに あなたに あなたに ただ逢いたい



パタリと声が聞こえなくなった。



男は足を止めた。



「聞こえなくなっちまったな」



誰に言うでもなくポツリと呟いた。



「誰に、逢いてーんだよ」



そんなにも哀しそうに歌って、それでも逢えないのか・・・。



男は自分でも分からぬ内に、歌の主を気にかけていた。



これは月夜の桜の下の出来事。



そして、全てのはじまり≠セった。



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