想いのカケラ

□第1章
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「そっちに逃げたぞ!追えー!」



そんな声が街に響き渡った。








 第1話「怪盗」








その夜、警察はある1人の怪盗を追いかけていた。

年齢も性別も不詳、小柄な体をしていて身体能力は抜群の為、何度も逃げられている。

それは今日もまた然り…。



「くっ!今日も駄目だったか!!」



見えなくなった小さな影に警官達は肩を落とした。

そして上司への報告と、説教を聞くために帰っていった。















そんな警官達をビルの上から小さな影が見下ろしていた。



「行ったかな?」



小さな影はフゥと息をついた。

月を覆っていた雲がゆっくり流れ、月が顔を出した。

月明かりが影を照らす。


その姿は少年だった。



「ごめんな」



少年は本当に申し訳なさそうに謝ると宝石に目を落とした。

キラキラと輝く宝石。

しかし少年の表情は浮かないものだった。



「またハズレ、かぁ」



ポツリと呟く。



「仕方ない…ジープ!」


 キュー



少年が呼ぶと、1匹の白竜が現われた。

少年は白竜――ジープ――をひと撫でする。

嬉しそうにするジープを見ながらビルの非常階段に向かった。



「今回もハズレだったんだ。報告もあるし、家に帰ろうな!」


 キュー!



そう言った少年に、わかった!とでも言うようにジープは鳴いた。

ジープと少年――悟空――はビルの中に姿を消した。
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