Opposite World

□世界と仲間
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窓からオレンジ色の光が差し込む。時間を見れば5時ちょい過ぎ。読んでいた本にしおりを挿め閉じた。
そろそろ、片付けて閉館にしよう…。今日は学校がお昼で終わったから半日は読書出来た。人が残っていないかを確認し、帰ろうとバックを見ると…。


『…あれ?』


バックの隣には家にあるはずの日本刀…。
………持ってきたっけ?いやいや、持ってくるはずがない。銃刀法違反で捕まる。
父が小さな剣道教室を開いていて、私も物心ついた時から習い始めた。家には家宝の日本刀が置いてあるのだが…なんで此処に…。


―…バサッ


部屋の端の方から物音がした。…泥棒…なわけないよね。でも、怖いから一応持っていこう。日本刀を手に取り音のした方へ向かう。やはりそこには誰もいなく、本だけが落ちていた。


『…当たり前だけど』


落ちた本に近づき上から覗き込む。…不思議の国のアリス?へぇ、こんな絵本あったんだ。手を伸ばして本を取った…はずなんだけど…


『……え…?』


取ったはずの本は手元から消えていた。その代わり周りには見たことがない植物。先ほどまでオレンジ色だった空が真っ青になっている。


『…ここ、は…どこ…?』


え…何?私、さっき図書館にいたよね?待て待て…落ち着け。周りを見ても見たことのない風景…見たことのない?…いや、何かで見た…。ふと、落ちた本の題名を思い出す。


『………不思議の国のアリス』


…の世界…?そんなバカな。本に吸い込まれた?そんなメルヘンチックな事が起こったのか…。
…というよりも、先ほどから背後に物凄い殺気が…。振り向きたくない気がするが、とりあえず振り向いてみる。


『…は?』


振り向いた先には、ものすごーく大きなモンスターらしきものがこちらに向かって歩いて(走って?)いる。ドシンドシンとそのモンスターが歩くたびに地面が揺れる。頭で考えるよりも早く足が勝手に動いてその場から走る。


『…これは夢だ、これは夢だ…』


というか、夢であってほしい。後ろを振り返ればモンスターはまだ追ってくる。だけど…私ってこんなに足速かったっけ?周りの植物たちがものすごい勢いで過ぎていく。…逃げ切れるかも。


『…うわッ!!』


茂みを抜ければそこは崖。しかもかなりの高さがある。飛び下りれば高確率で死ぬだろう。追いついたモンスターが私を見て雄叫びをあげて突進してくる。…マズイ、マズイ!マズイ!!ど、どうしよう…。


『…!!』


いままで驚きだらけで気付かなかったが左手には日本刀が握りしめてあった。そして体が勝手に動き鞘から刀を引き抜き、モンスターに向かって走り出す。刀を構え下から上に力の限り振るった。


『……』


次の瞬間、モンスターは真っ二つになり斬られた場所から周りに溶け込むように消えていった。私はその場に呆然として見ていた。


『…一体』


「―…ねぇ、あんた!!」


「お、おい、アリス」


声を掛けられ後ろを振り返るとそこには学生服を着た男の子とまるで絵本に出てきそうな可愛い女の子。…私の学校とは違う制服…。ガサガサと茂みをかき分けて出てくる。その後ろからも5人ほど出てきた。


「あんた、何者なの?あのモンスターを一撃で倒すなんて」


『一応普通の学生、なんだけど』


「普通じゃないって。あのモンスター倒すのに俺達苦労してたのにさ」


緑色の髪をした少年らしき人が私を見て言う。そして頭には耳が…多分あれは猫の耳…。


「まぁ、標的が変わってくれたおかげで俺達命拾いしたけどな…」


ピンク色の髪をした人が苦笑する。この人には真っ白なうさぎの耳が付いている。


「…それで、お前はいつからここにいるんだ?」


青色の髪に黒い帽子を被った男が見る。帽子には「10/6」と書いてある。…なんだろ、あれ…。


『ついさっき。図書館でバイトしてて、気づいたら此処にいた』


学生服を着た男の子と金髪の長い髪をした女の子が驚いたように互いの顔を見合わせた。


「…もしかして、お前も吸い込まれたのか?」


『本を拾ったら此処に来てたけど』


「私達2人も吸い込まれて此処に来たのよ。そしたらこんなふっつーの男と身体が入れ替わっちゃったのよ」


…入れ替わった?あぁ、だからしゃべり方がおかしかったのか…。


「私達、元の世界に戻るために王を倒しに行くの。あんたも私達も同じ境遇だし、戦闘力もあるから一緒に行きましょう。仲間は多い方がいいわ」













世界仲間
(とりあえず一緒に行くことにしました。)








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