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□夕日色の髪
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 私は紙袋を両手で抱え、ある所へと向かっていた。商店街を横切り、人気のない裏路地を通り、ずんずん歩いて行く。余計なことを考えないように脇目も振らない。

 でも無心で居られたのも、途中までだった。シカクさんに言われたことや、店員さんの話。そして、背を向けたときに僅かに見えた波風さんの表情を思い出してしまう。

 驚いたような、それでいてどこか悲しそうな顔。忘れてしまおうとしているのに、ほんの少しも忘れることが出来なかったのだ。
  
 紙袋を持つ手に無意識に力がこもる。

 くしゃりと音がしてようやく紙袋が潰れかけていることに気が付き、慌てて抱え直した。幸い袋は破けておらず、端がよれただけだ。

 ほっと安心して吐いた息もすぐに溜息に代わる。あまり考えないようにしていたのに、一度考え出すと止まらなくなってしまった。

 どうしたって後悔しか生まれてこない。どうしてあんな避けるような真似をしてしまったんだろう。問いかけてみても確かな答えは出てはくれない。

 私がしたことは恩を仇で返したのと同じだ。自分が弱っていたときに優しくしてくれた人を、無神経に傷つけてしまった。

 今にも止まりそうだった足が本当に止まってしまいそうになる。

 やっぱりカカシ君に頼んで、届けてもらおうか。

 抱えていた紙袋に視線を落とした。中には借りた服と、先日買ったお煎餅が入っている。

 今日の目標は、この紙袋を波風さんの家に置いてくることだった。これさえ置いて来られれば誰が行っても同じこと。お礼を言いたければ、カカシ君に伝言でもなんでも頼めばいいのだ。そうすれば私が行かなくても、特に問題はない。

 ぴたりと足が止まる。

 このまま帰ってしまおうか。

 でも、私はゆるく首を振ってその考えを消した。

 お礼と謝罪だけは直接言わなければ。

 それだけを思い、止まってしまった足を前に出した。
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