没ネタ 二次創作

□幻想古書店で珈琲をx宝石商リチャード氏の謎鑑定
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:あらすじ:
柔道の先輩と物別れして、しばらく経ったある日。(『宝石商リチャード氏の謎鑑定』2巻後)
授業で使う参考書代を節約するために、古本の街、神保町にやって来た中田正義
たまたま入った新刊書店で、“縁を失ったり、失いかけたもの”しか入れない魔法の古書店、“止まり木”に巡り合う。


初対面ながら言葉巧みに悩みを聞きだした店主の亜門に、慰めてもらう正義。
気持ちが少し晴れた正義の話は弾み、やがて自身が宝石店でバイトしていると話していると、亜門は突然宝石を課金したいと言い出す。
司は驚きながらも亜門が普段から言う、面倒な宝石の課金の仕方について興味が沸く。
一方今まで宝石を販売する方は幾度となく見て来た正義だが、買い取りとなると全く見たことがなかった為、連絡してみないと分からないと言葉を濁す。
なら、さっそく連絡してみてください、と亜門にリチャードへ連絡を促された正義は、早速連絡用に使っていたアプリを立ち上げる。
メール魔のリチャードは都合が良かったらしく、すぐに返信が来ていくつかの質問を亜門に浴びせた後、課金したい宝石を写真で送ってほしいと言い出す・・・。

 
(亜門が司を連れて、リチャードの店に来店。
正義の言うとおり、亜門やコバルトとは別次元の美人の登場に驚く司。
思わずこっそり、亜門に「彼は人間ですよね?」と尋ねたり・・・。)

亜門が持って来た大きい宝石の原石を、次々と鑑定し値段を付けていくリチャード。
鞄の中からこれでもかと、ごろごろと出てくる宝石の石達をこわごわと見守るしかない日本人達はもう何も言葉を発せないでいた。

「あ、亜門。これって全部コバルトさんの“庭”で取れたモノなんですか?」

店のテーブルの上は、ごつい宝石の山で形成される中、司は持ち主たる亜門に小声で恐る恐る尋ねる。

「おそらくは。」
「ほ、他のものはないんですか?宝石以外の物は・・・。た、たとえば金とか?」
「言えばあるでしょうが、コバルト殿はバア・・・いえ昔から宝石が好きでしたし、貰う側から注文を付けると言うのは礼儀に反しますし・・・。」

自身の正体を知っている司以外が居る中で、うっかりコバルトの以前使っていた名を言いそうになった亜門は咄嗟に訂正する。
それにしてもコバルトならもっと課金しやすい物も持っているだろうと、以前から疑問に思っていた事を口にしてみた司だが、やはりそこは数千年間の時間を経ても互いの立場を変えない彼らなりの心得が関係しているようだ。
この様子だとコバルトは、これからも礼の代わりに宝石を持ってき続けるし、亜門もそれを何ともいわずに課金しづらいことを悩みつつ貰い続けるだろう。私が間に入る余地もない。
そしてそんな私達の話を聞いている暇もないのだろう。店員正義の言うとおり最早人間かどうかすら疑いたくなる美貌の宝石店の店主は、機械の如くひとつひとつの石を白手袋をした手に取り、先程からルーペと睨めっこしたり、傍に置いた紙に何やら英語らしき文字や数字を書きながら宝石の査定をしていく。
 
「あのー、それにしても亜門さんの友人すごいですね?これだけの宝石を集めるの趣味とか。宝石の原石ひとつでこんなに大きいとか。正直俺には一生縁がなさそうって言うか・・・。」

亜門はこの宝石店の店主や店員の正義に対して、課金してもらう宝石の説明を、「宝石を集めるのが趣味の友人から貰ったもの」と誤魔化したのだ。まさか一般人が“魔神”と呼ぶ旧き神々の間で現役の硬貨ですよ、なんて口が裂けても言えない。

「・・・まあ、正義が言うのも無理ありませんね。私もひとつふたつは見た事ない大きさの原石がありましたから。」

亜門が宝石を見せた時から何かを聞きたそうな目でいた、宝石店エトランジェのオーナー リチャードは、査定していたこぶし大の宝石から顔をあげる。

「よろしければ、その御友人の名前を窺っても?」
「構いませんが、恐らく聞いたことはないと思いますが・・・。」

どんな富豪のコレクターなのか、あるいは裏社会の組織と繋がりでもあるのかといぶかしむリチャードに、大人の対応で返す亜門。
コバルトの名前ぐらい教えても大丈夫だろうが、正規ルートは確実に通っていない宝石の出所を突っ込まれても困る。亜門と違い、ひとり突っ込まれた時のフォローをあれこれ考ええていた司に、急に声がかけられる。

「司君。書類の書き込みをお願いできますかな?」
「は、はい!・・・え、書類?」

亜門が山の様に持ちこんだ宝石は、いつのまにか形よく机の隅に追いやられており、司の目の前には、その宝石たちの買い取り金額が書かれた書類が置かれていたのだった。
「よければ日本語以外の書類をお持ちしましょうか?」と尋ねるリチャードの申し出を軽く断り、書類の書き込みを司に任せると言う亜門の言葉に、ますます宝石の出所を怪しむリチャードだが、そんな事はおくびも出さずいつもの営業スマイルで司に身分証の提示と、書類へのサインを促す。

 
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