没ネタ 二次創作

□幻想古書店で珈琲をx宝石商リチャード氏の謎鑑定
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なるほど亜門が言ってた身分証とはこのことか。
宝石を課金しに行く日取りが決まった時、司に身分証やハンコを用意するようにお願いしていた亜門の意図を私はやっと理解した。
亜門は確かに浮世に存在しているし、他の人間と同じく触る事も話す事も出来る。しかし、社会的に、いや人間社会的には何にも縛られてない代わりに、人間社会に必要となる保障するものを何も持っていないのだ。
いうなれば、住民税や所得税を払わない代わりに、年金とか保険金が貰えないのだ。
多分亜門が払っている税金があるとしたら、消費税くらいなものだろうけど。


「あ・・・れ?宝石ってこんなに安いんですか?」

査定したリチャードを目の前に、買い取り金額欄に書かれていた金額が思ったより少なく感じてしまった司は、思わずそんな言葉を口にしてしまう。
と言っても、0の数は余裕で6こは越えているのだが。

「ホントだ!」

客の個人的な事ながら、司が挙げた声に思わず気になってしまった正義は、司の目の前に置かれたリチャードが査定した金額表を見る。
買い取り専門店ではない、と先に亜門たちに宣言していたリチャードだが、店主の宝石愛は人一倍知っていた正義には少し理解しがたい金額だ。
新刊書店で買ったばかりの本を、古本屋に売った時の様な値段だ。
以前店に来た先輩が、舐めてるのか!と怒鳴っていたが、これなら理解できなくもない。
説明を求める様にリチャードに目をやると、宝石査定の作業から解放されたからか、一息つき正義の入れたロイヤルミルクティーに口を付けている所だった。

「お2人ともそんなに驚かなくても・・・。これくらいの値段だと思いますよ?」

課金慣れしている亜門は、低い査定金額に文句を言うでもなく、妥当だと言うのだ。
司と正義は亜門の言葉にさらに驚く。


「宝石と言っても全ての石が、皆さまが知っている様に指輪やネックレスに加工されるものとは限りません。強度や色合いが足りずに絵具や工業用に加工される石があります。」

客である司に説明するために口を開くリチャードの目は、来客用の解説モードに切り替わっていた。
 
「いくら見た事ない大きさの宝石でも、原石となれば一環の宝石店では辛うじて表面の色合いや強度を測ることしかできません。精密な鑑別は専門機関でないと出来ません。
ですから、宝石商は宝石の原石の買い取りを嫌がる所もあります。
買い取り値段が妥当かどうか、その原石が装飾品として使えるかどうかを判断するにも長い時間と経験の積み重ねが必要なのです。
ですから、いくらお客様が見た事ない大きさの原石を持ってこられたとしても、こちらがあまりに高額で買い取りすると大損する可能性があります。ですから、そのリスクを見た上での値段なのです。
完成された装飾品であれば値段も変わるでしょうが。」


買い取りも立派な商売なので、高額な値段を付けられないと安易に教えるリチャードに、宝石商の仕事を垣間見た平凡な日本人たちは感心するしかなかった。
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