□認識と確認を。
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当たり前の日常が、当たり前でなくなる感覚はいつの間にか麻痺をして…相変わらず自分はダメダメな『ダメツナ』だと思うけど、今までにないほど沢山の人に出会って、戸惑って、考えて、泣いて『ダメダメ』な俺はきっと少しずつ変わっていったんだと思うんだ。
だって、学校の休み時間を楽しいと思う事なんか一度もなかった。

「どうしたんです?十代目?何か考え事ですか!?」
心配そうに覗きこむ、彼の髪からふわりと香る火薬の香りに「えっ!!いや、なんでもない!なんでもないよ!!」と慌てて首を振ると「なら…いいっすけど、何かあったらすぐ言ってくださいね!!もし、十代目を困らす奴が現れたら必ず俺が始末しますから」ニッカリ笑う獄寺隼人の手に握られたダイナマイトを慌てて奪いとる。

「ちょっ、ちょっ、危ないなぁ!!もう、どっから出したの!!」
「どっからって…、まぁ、ここからっすかね?」
「ぅえ!!凄い数キタぁぁぁぁぁ!!!」

獄寺の机やら鞄には、どこにどうやって仕舞ったのか分からない無数のダイナマイトを見て、思わず机から立ち上がった。

「っと、危ねー。またマフィアごっこか?ツナ」
「や、山本」

これまたニッカリと笑う屈託のない顔がひょこっと真上から覗く。
人懐っこい笑顔に野球で少し日に焼けた肌の山本武。

「んなぁ!てめぇ、馴れ馴れしいんだよ!十代目から離れろ!!」
「あははは、相変わらずだなぁ」
「てめぇ!!」

「ちょっ、ちょっ、待って、」

「いいえ!十代目!!ここはハッキリこの馬鹿にどちらが十代目の右腕かわからせてやります」
「えっ!!獄寺君ちょっと落ち着いてよ!!」
「あはははは。まったく、んなもん分かってるぜ…俺だろ?」
「果たす!」
「わわわ!!山本も煽るような事言わないでよ!!」

こんな調子で、友達との会話で休み時間が終わるのも…赤ん坊の家庭教師リボーンが来てからで
いやいや、そもそも何故赤ん坊が家庭教師なんだ!と突っ込みを入れたい所だけど、この疑問はいつの間にか麻痺した日常に自然と馴染んでしまった。
なんでも、自分はイタリアのマフィア『ボンゴレ』の十代目とかなんとか…なんでだよ!!っと、何度も突っ込んだし自分がマフィアなんて想像も出来ないし、漫画やドラマでしか知らない組織を継ぐつもりはもちろんないのだけど。
殺し屋で、マフィアの『ボンゴレ』に絶大の信頼を得ているリボーンは、俺を十代目にすべく毎回突拍子もない事ばかり言ったり、やらされたりで毎日の日常が非日常に変わり、飲み込まれてしまった。
でも、そのお陰で獄寺君や、山本に出会って…今までの毎日がガラリと変わって楽しくなった事は悪くないけど。

「だー!何でお前が雨の守護者なんだよ!!」
「んなもん、これがあるからだろ?」

血管がキレそうな獄寺に、にこやかな山本は指に光るボンゴレリングを見せる。
ボンゴレボスを筆頭に6人の守護者が存在する。
獄寺は嵐。山本は雨。家で今頃テレビゲームでもやってるであろうお子様牛は雷。愛しの京子ちゃんの「極限!」が口癖なお兄さんは晴。それから…まぁ、問題なのがあとの二人なんだけど

「いつまで群れてるの?」
「ぅお!!ひ、ひ、ひば」
「なに…煩いな」

突然問題のリングを持つ雲雀恭弥の声が聞こえ、 声の主を探すと窓枠に足を掛けて身を乗り出す雲雀恭也が苛ついた様子でこちらを眺めていた。

「ま、ま、窓から入って来ないで下さいよ!!」
「ふん。どこから入ろうと僕の勝手だよ。それより…何?文句あるの?」

心底つまらなそうな顔をした雲雀に誰が文句を言えよう。
ボンゴレリング、雲のリングの持ち主で最強とうたわれる男。
団体行動を嫌い、母校を愛する風紀委員長様だ。

「やっ!あの、特にないですが…どうしたんですか?」

おずおずと当たり前の疑問を問うと、雲雀は小さく鼻を鳴らした。

「ちょっと、顔かしてよ」
「は……はいぃ???」

沢田綱吉をじっと見つめ、腕を組む。
鋭い目線に恐怖心ばかりが募る。


(な、なんで俺?まじこえぇぇぇぇ!リボーン!!)

心で不在の家庭教師の名を呼ぶ。

「ねぇ?どうするの?…かみ殺すよ?」

(理不尽!!)

パクパクと口を開けるだけの綱吉を見て、今の状況を判断したであろう獄寺と山本は慌てて雲雀の前に出る。

「ま、まてよ!十代目を何処に連れてく気だ!」
「そ、そーだぜ。もう授業も始まるんだしさ、風紀委員長がサボらしたらまずいんじゃねーかな!」

(獄寺君!山本!)

ああ、友情って素晴らしいとばかりに指を組み二人の影に隠れる。

「…誰の前で群れてるの?どいてよ。それに、学校行事だからね。その小動物を渡してくんない?」
「「学校行事!?」」

二人の声がハモる。
二人の声がハモった事に、ますます顔をしかめると、トンファーが腕に光る。
その様子を隠れて見ていた綱吉は慌てて二人の前に飛び出した。

「待ってください!!何で学校行事に俺だけが必要なんですか!?」

半泣きの声で異議を唱える。

「…今日は黒曜中の生徒会と意見交換とやらがあるんだってさ。」
「「「こ、こ、黒曜中!!?」」」

思わず三人でハモってしまい、「咬み殺す」と盛大にトンファーを振り落とした雲雀を見た直後、星が舞って暗転した。
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