しょうせつ

□純情ウブのラプソディー・前
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なんだかんだ言ってもね。
なにもできない自分に、腹が立つんですよ。
――ヘッポコ丸。


ボーボボ一行の今日の昼飯はカレー。
森林生い茂る空気のうまい森の中で、食うほかほかのカレーは絶品だ。
しかも、ビュティさんの手作りだ。これはもう絶品だ。
絶品なんて言葉に収まるもんじゃない。これはもう神の料理だ。
……いや、ちょっと言い過ぎた。でもこれは最高に旨い。今まで食べた料理の中でもトップクラスに旨いかもしれん……。

とかなんとかブツクサ言いながらヘッポコ丸がカレーをたいらげていると、泣き顔をした首領パッチがヘッポコ丸の袖を掴んだ。
「へっきゅ〜ん」
「……なんだよ」
「風船が木に引っ掛かっちゃったの。取って〜ゥ」
「は?自分で取れよ」
「テメェ、俺の身長を見てそんな戯言吐いてんのか?」
「威張るとこかよ……」

せっかくカレー食ってたのに。
渋々、立ち上がったヘッポコ丸は、首領パッチの後をトテトテついていく。
若干入り組んだ木々の真向かいに、首領パッチの風船はたかだかと枝に組み付いていた。
いや、それより衝撃的なことがある。
ビュティさんがいた。

「あ、へっくん!」
「びゅびゅびゅ、ビュティさん!?」
「あのね、首領パッチくんはさっきもらった風船、離しちゃったんだって」
「そうなのよ〜!せっかくヨコセヨデパートでもらった唯一無二、純情無垢な私の可愛い可愛い風船ちゃんが、鳥になりたいって空に……ひどいわ!」
「意味わかんないよ、首領パッチくん」

ふー、とため息をつくとビュティは、腰に手をやりたかだかと宣言した。
「よし!へっくん、肩車!」
「へっ!?」
「肩車して、あの風船取るんだよ。いい?」
「へ、う、うん」
「へっくん屈んで」

言われた通りに屈むヘッポコ丸。
そのうえに座るようにして、ビュティはゆっくりヘッポコ丸の肩に乗った。
「……うわ」
――ビュティさんの太もも、柔らかい……。
「よし!立っていいよ、へっくん」
「う……うん」
「ヘッポコ丸、大地に立つ!」

「ちょっと待ってねっ、へっくん……」
「……」
「よいしょ、んしょ……」

ビュティさんの身体が俺に当たってる。
ビュティさんの体温を感じる。
ビュティさんの息づかいを感じる。
ビュティさんの柔らかさを感じる。
ビュ、ビュティさんの股関が……。
俺の頭に。

「……」
「やった!取れたよ、首領パッチくん」
「やるじゃねーか小娘!」
再び屈んだヘッポコ丸の肩から、ぱっと飛び降りるビュティ。

「助かったぜレディーガガ!サンキューレディーガガ!」
「私レディーガガじゃないよ!」
「ん?なんか顔赤いな、ヘッポコ丸」
「……」
そう、湯気が立ちそうな程に。

「はやくご飯食べちゃお。さき戻ってるね、首領パッチくん、へっくん!」
「あ、ああ……」
「じゃあなー」

「ふ、ふわふわ……」
まだ微かに残るビュティさんの体温と香り。
ああ、これをビンに詰めて持ち歩ければいいのに。
……なんか、ビュティさんの香りを再現した香水とか出ればいいのに?

「で?楽しかったかよ、童貞」
「はっ!?」
首領パッチがニヤニヤ笑いながら、肘でヘッポコ丸を小突いてくる。
「ビュティを肩に乗せた感想はどうだよ?ヘッポコ丸」
「……べ、別になにもないぞ……」
「そのわりには随分興奮してるじゃねえか」
「興奮なんかしてないぞ!」

ふー、と首領パッチはため息をつく。
「お前、その感触でオ●ニーでもすんのか?」
「オ、オ●……!?」
「テメェ、ビュティが好きなの?」
「!!」
「実際どうなん?」
「……」
「言わなくてもわかるけどな」

「お前、好きなら好きでなんか行動に移せよな、ヘタレ?」
「……時期もあるし……」
「アホか、言い訳じゃねーか」

首領パッチは切り株に座り、深々と談義する。
「俺が若いころなんてな、華麗なトークセンスで女なんか何十人もはびこってたもんよ?」
「お前、学生だろ」
「ハジケと現実を一緒にしないでよ!」
きゃーやだ、首領パッチはぶんぶんと手を振り回す。

「いいじゃねぇか、近々よ、好きですとか、I NEED YOUとかかましちゃえよ」
「I NEED YOU……?」
「いいんだよ、どんな戯言吐いても」

「な?どうなんどうなん、言う?」
「……首領パッチには関係ないだろ」
「あ?」

ピキ。
首領パッチの額に怒りマークが浮かぶ。

「テメー、ちょっとは男をあげたいとか思わねーのか!?アアン!?」
「う、うるさいなあ!」
「一生童貞でいいのか!?あ、ビュティさんいいな〜、可愛いな〜とか思ってるうちに、旅が終わっちまうかもしれねーんだぞ!?」「う……」
「今日を頑張ったものにのみ、明日がくるんだよ!わかってる?そこんとこ?」
「……」

なんだか痛いところをチクチク責められて、ヘッポコ丸はすっかり黙りこむ。
「ま、今日なんか言えやお前」
「!?」
「今日なんにもしなかったらお前のあだ名、ヘタレ童貞な」
「な……」
「頑張る?」
「……」

首領パッチは俯くヘッポコ丸の顔を除きこむ。
「……」
「が?」
「……が」
「が?」
「がんばる……」

ニヤァ〜と首領パッチは笑顔になった。
「よし頑張れ!今日頑張れ!今頑張れ!」
「頑張るよ!頑張ればいいんだろ!?」
「なんなら今から告白するか!?」
「い、今は無理!!」
「え……?」

「お名前、ヘタレ童貞ですか……?」
「ム、ムードがあるだろ!やっぱ告白っていったら、夜の方が雰囲気でるじゃん!」
「お〜っ!そんなところまで気が回せるようになったか!いや〜策士だな〜、へっくん!」
「任せとけって!」
「大きく出たね〜!童貞!」

言ってるうちにデカい気分になってきたヘッポコ丸。
はたして、告白はうまくいくのか? 続きは次回!

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