Love ManiaC

□キスの温度
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照史はいつになくソワソワと楽屋をせわしなく歩き回っていた。


いや。

普段から落ち着いている方ではないのだけど、今日の照史はいつも以上にせわしない。



さながら動物園の檻の中で、穏やかに昼寝が出来る場所を探し回る熊かライオンか…。



「照史、ちょっと落ち着きぃや」



目に余るソワソワぶりに、気の長い濱田もさすがに黙ってはいられない。



「そぉですよ、照史くん」

「ボクらまでソワソワしてまうわー」



後輩の重岡と神山も声を揃えて照史に言及した。



「せやかて、淳太くん遅ない?もうすぐ着くでーってメールきてから何分経ってる?」




照史は淳太から送られた
『今、静岡。もうすぐ東京駅やで』
というメール画面を呆れ顔の3人の目の前に押し付けた。



元々八の字の照史の眉がみるみるうちに情けなく下がっていく。



「淳太くん…迷子になっとるんかなぁ…。どっかで襲われとったり……」


泣きそうになったかと思えば、青ざめてみたりと
まさに負の百面相を繰り広げる照史の頭の中は
久しぶりに再会する愛しい人でいっぱいだった。



「濱田くん、電話…してみてくださいよ」


見かねた重岡がこっそり濱田に提案したが


「ぃゃ…淳太…電源切れてんねん…」


これまたこっそりと電話を掛けてみていた濱田に溜め息と共に突き返された。


「あいつ…充電ぐらいしてこいよなぁ…。しっかりしとるよーで、こういうとこ抜けてんねんなぁ…」


3人共、今も尚目の前でウロウロしてる照史から目を離せずにいた。




今の照史は危険だ。



先日も、期間限定とはいえ遠距離恋愛中な淳太から

おやすみのメールが来なかった!!浮気か!!

と大騒ぎして楽屋をウロウロ歩き回った挙げ句
無意識にそこいらのバックの中身を出しては、違うバックに詰め替えるという
なんとも不可解な行動をとったばかりだ。



何も気付かずに各々がホテルに戻り、10分後に再びひとつの部屋に集合しなければいけないという事態に陥った。



あの夜の再来は避けたい3人は、各々の荷物を抱えたまま
予測不可能な行動を繰り返す照史をただただ見守っていた。









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