NARUTO「カカスレナル」novel4

□いのちの燃える色
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優秀な忍でもある父を持ち、持て余す頭脳を持っていたシカマルは当たり前のように奈良家の子として十二分の力を身につけていた。
ナルトの真実に自力で辿り着き期待以上の働きにカカシの勧めもあり、ナルトこと鷹とのツーマンセル任務へ着けるのも早かった。それだけの力を持っていたのだから。

実戦は甘美ですらあった。

人が人を殺し実績を上げる世界、それを高みから見下ろして世の情勢を見定める。
まるで自分が鷹の相棒になったかの様な錯覚に陥り、鳥肌が立つのを感じた。
何度も、幾人にも襲われた。それは群からはぐれた武者であったり敵陣に仕える忍であったり気を違えた村人であったり。
それらを容赦なく血祭りにあげシカマルは自分が一層昂ぶるのを感じた。今、己は他と一線を凌駕している。錯覚が確信に、そして自信へと変化していった。



「……黒影、火影から使いを頼まれたんだ。付き合ってくれるか?」
「ええ、構いません」


己を知るのは存外早いものだ。シカマルは目の前の光景に思わず呼吸を忘れた。

粉塵が舞い上がり、次いで爆発が連続してそこかしこで巻き起こる。悲鳴も怒号も地を揺らす轟音に呑まれた。一つの集落が見る間に焼け落ちていく。

「乾燥した日でよかった。おかげで早く済みそうだ」

何気なくもそんな事をのたまうナルトに、思わず震えた。
いくつかの仕掛けを施し、あっという間に賊の集落を葬ってしまったその手際に美しさすら感じる。
無感動に炎を見る暗部面越しのナルトの瞳はひたすらに澄んでいて、映った炎が揺らめいていた。

ああ、只管己が恥ずかしい!自分などこの人の足元にも及ばぬのに。

「見て御覧、黒影」

す、と焼け落ちる集落へと伸ばされた手は炎に照らされて橙に染まる。何故か急激に渇きを覚えて、無意識に喉を鳴らした。

「いのちが焼ける色だよ」

柔く微笑むナルトの瞳はいのちが焼ける色と同じ色を映していて、まるで人ではないもののよう。赤々と燃える炎に照らされるナルトはとても美しく、知らずのうちに涙が零れた。

炎が炎を生み、消えていく様をじぃと見つめるナルトはまさしく自分が思う神のようであり、俺は自然と地に膝を着いていた。涙は止まらなかった。
甲高い女の悲鳴が聞こえたが、すぐに轟々と荒ぶる炎の波に呑まれて消えた。



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