NARUTO「カカナル」novel
□Christmasの遅刻魔
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「クリスマスには帰ってくるってバァちゃんも言ってたのになぁ…。任務の帰りに何か問題でも起こったのかな…」
忍びはいつ何が起こってもおかしくはない。予定通りに帰郷できるとは限らないのだと分かってはいる。
分かっているけど、こんな独りのクリスマスは幼い頃の思い出を思い出させて寂しい気分になってくる。
幼い頃……。クリスマスのパーティーで楽しそうにしている家族を窓の外から眺めては独りで過ごしていた。
そんな独りの夜を過ごしてきた思い出がフッと蘇り、涙がジワリと溢れてきそうになる。
だんだん見上げていた月がぼやけ慌てて手の甲でグイッと涙を拭って俯いた。
「ナァ〜ルト。何で泣いてるの?」
頭にフワリと置かれた暖かい手の感触…。
バッと顔を上げると満月を背にカカシが笑っていた。
「……っ。カカシ先生」
「遅くなってごめ〜んね、ナァ〜ルト。頑張って任務を早く終わらせたんだけど、帰りの途中でトラブルがあってね。遅くなっちゃった」
フワリと抱き締められて、カカシの温もりを感じている内に、寂しい気分がウソみたいに消えていくのが分かる。
ギュッとカカシに抱き付く。
「おかえりってばよ。カカシ先生」
「ん。ただいま、ナルト」
おかえり、と言って軽くキスをすると、ただいま、とお返しのキスが返ってくる。
「で、何で泣いてたの?」
軽いリップキスを繰り返しながら、カカシが聞いてくる。
「ん…。別に大した事ないってばよ。月を見てたらガキだった頃の事を思い出しただけだってば」
カカシの背に手を回してベストをギュッと握り締めさらにキツく抱き付く。
「………。」
「ガキんちょだった時にクリスマスが嫌いだったなって思い出したんだってばよ。暖かそうな家で楽しそうにクリスマスをしてるのを窓の外から見てたなぁって思い出して……」
また、ジワリと涙が出てきそうになる。
「今は、俺が居るから寂しくないでしょ?少し遅刻したけど、今からクリスマスしようよ。ナァ〜ルト」
目の淵に浮かんできた涙を指の腹で拭いながら、優しいキスを繰り返す。
「……ん。先生の遅刻癖は、よ〜く分かってるってばよ。だから今更驚かないってば」
ナルトのその答えに苦笑いが浮かんでくる。
「俺ってば、先生と一緒に居られれば、それだけで十分嬉しいってばよ」
「ん。俺も同じだよ」
シャワーを浴びて、少し遅れて始まった2人だけのクリスマス。
ナルトが用意してくれていた、料理を食べて、ナルトが作ったあんまり甘くないケーキを食べて……。ソファーで2人ゆったりと過ごす。今、この時を大切にしよう。
「ナァ〜ルト」
「なんだってばよ?」
優しく名前を呼ばれて、振り返るとカカシは小さな箱を2つ差し出した。
「日にちは変わっちゃったけどね。クリスマスプレゼント」
「開けても良いってば?」
「いいよ」
ガサガサと箱を開けると、出てきたのは…。
「先生、渡す相手、間違ってね?」
…プレゼントは、カカシの家の合い鍵と…シルバーに光る指輪。
「間違ってなんかないよ。その指輪、俺のクナイのなれの果て。どうしても潰さないといけないのがあってね。だったら加工してもらって、ナルトに持ってて欲しかったの。それに、プロポーズのつもりだから。一生側にいて欲しいって思うのは、ナルト…オマエだけだよ」
ナルトの左手を取り、薬指へと指輪を嵌めていくと指輪へと誓いのキスをする。
「良かった。サイズも大丈夫そうだね」
「………。」
「ナ〜ルト?」
「うれし…ってば。大事にする」
大事そうに、指輪をした手を抱き締めながら、その蒼い瞳に涙をいっぱいためカカシに微笑む。
「なんで泣くのよ。ナルト」
「これってば、嬉し泣きだってばよ」
頬を伝う涙をキスで吸い取りながら……。
「なんまり泣いてると、もっと泣かせたくなっちゃうよ?ナルトの泣き顔って凄くソソるんだよね。襲っちゃうよ?」