NARUTO「カカスレナル」novel3

□秋祭り
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カラン、コロン…。

心地良い下駄の音が静かなまだ薄明るい秋の夜空に響く。

時折通り過ぎる風は秋独特の涼しさをのせ2人の間を抜けていく。

カラン、コロン…。

けれど、祭りに行くと言うのに、その音を奏でているナルトからは軽快さが少しも感じられない。

「ん?なに?」

ふと、視線を感じてそちらを見たカカシは、ほんの少し不服を写した瞳がカカシを見ていた。

「やっぱりカカシも浴衣にすれは良かったのに…」

ボソリと呟かれた言葉はナルトの独り言のように夜道に消えていった。

「コレだって似た様なモノだよ?」

まぁ、こっちの方が動きやすいけどね…。

言いながらカカシは着ている甚平の袖を広げてみせた。カカシの銀の髪と濃紺の甚平が良く似合っている。

「なら、俺もそっちが良かった…」

随分と珍しい事に子供染みた口調を聞かせるナルト。怒っているわけではない。これはきっと、滅多にないナルトの我儘だ。

「ナルト…俺とお揃いが良かったの?」

「…っ!!そ、そんなんじゃ…っ///」

カカシが揶揄を含めて問う。案の定、予想通りの科白を放ったナルトのカカシは耐えず笑みを見せた。

「それじゃあ、何がご不満なのかな?ナルトさん」

逃げられない様にそっと手を取り下からナルトの顔を覗き込んだ。瞬間、間近すぎるカカシとの距離にナルトの顔に朱が走る。

照れ…とは違う理由で…。

「なぁに?顔赤くしちゃって…何か期待しちゃった?」

「なっ、し、してない!バカカシっ///!!」

「ん〜?ムキになっちゃって…vV」

ふふふ…と怪しげな笑みを浮かべながらカカシはナルトを民家の塀へと追いやった。

「ふむ…その淡い期待にお答えしても……構いませんよ…?」

「っ!!おまっ『カカシ』の時にその口調はやめろ!!」

にやり、口角を上げた不適な笑みに、姿は違えどカカシの夜の顔を見て、ナルトがよりその朱を濃くした。

「だって、ナルト『カカシ』の時と『狼』の時との態度違うし」

「……夜のお前は昼とは違うから…な」

「ま、それはナルトも同じだけどね」

「まぁな…、てか、カカシいい加減どけ…」

視線は逸らされたまま、そこから抜け出そうとナルトはカカシの肩を押しやった。このままでは、煩い心臓の音がカカシに分ってしまいそうだ。

「…いや」

けれど、否定とともに身体を押し返されてしまう。慌てて視線を上げればそこには悪戯を見つけた様な何とも楽しげなカカシの顔があった。

「なっ、何して…離せって…祭り、行くんだろ?」

「うん、行くよ?」

「だったら…」

「ひとつ、謎を解き明かしてからでも遅くはない…白状しなさい。不機嫌の理由は何?」

表情も口調も柔らかなのに、瞳だけがナルトに否定を許さない。

「い、言ったらカカシ呆れるから…言いたくない…///」

「呆れる?」

ぷいっと再度背けられた顔はやはり赤いまま。その触れている肩も微かに震えている様な気がして、抱いた揶揄い混じりの小さな答えをカカシは口にしてみた。

「もしかしてナルト…欲情しちゃった?」

「…っっ///!!」

「…え?」

笑いを含んで言ったカカシの科白にナルトが弾かれたように視線を戻し、見開かれた瞳にはバレてしまった羞恥から、うっすらと幕が張っていた。

「え…?あ、の…」

「うるさい///!!カ、カカシの…せいだ!!」

「俺?」

「そうだ!お前のせいだ!!」

元凶は自分だと言うナルト。これが、最上の口説き文句だと…ナルトはきっと気付いていないだろう。

「カカシが…いつもと違うから…///」

俯きがちに零された言葉と共に徐に伸ばされたナルトの指がカカシの甚平を掴んだ。

たったそれだけの事なのに…ごくり、と思わずカカシは喉を鳴らしてしまう。

「なんか…い、色気…みたいなのがあって…///」

だから、カカシが悪い…。そう言って上目に窺うナルトにカカシの理性が早くも崩れそうになる。

「あ、もしかして…それで同じモノを着たかったの?」


耳まで赤に染めたナルトは小さく頷く事で答えた。

「同じのを着れば…俺だけじゃないかと…思って…」

それは、相手を欲する事を言っているのだろうか…。だとしたら、答えは簡単。

「それなら、別に問題ないよ?」

「?」

「だって、ナルトの浴衣姿…凄い色っぽいから…」

さっきからずっと、欲しくて困ってる。ナルトの耳元でそっと、カカシ甘いテノールが響く。

「このまま…帰っちゃおうか?」

「…っ、ま、祭り…は?」

顔を合わせてカカシが微笑めば否定はしないものの、ナルトがその意図を察して言葉を選んでいる。

「うん…でも、祭りは今月はまだあるから…」

帰ろう?指を絡めてカカシが手を繋げば、ナルトは目の前の唇に軽くキスを送る事で了承を示した。

カラン、コロン…。

すっかり日の暮れた秋の夜空に心地よい下駄の音が響く。

カラン、コロン…。

楽しげな喧騒の方ではなく、死の森の自宅へと向かうその音はどこか緊張を帯びていて…けれど何だかとても嬉しそうな音。

カラン、コロン…。

雪駄と並んだ下駄の音。心を写す音。
 

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