レンアイユウギ

□憐愛友誼3〜今夜、月が見えないとして〜
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元気にしてた?なんて社交辞令のような言葉を交わした後、私たちは居酒屋に入った。

今日会うことを提案したのは、私の方だ。
純粋に会いたかったのか、
あんたが結婚しても変わらず接してやるよ、なんていう、陳腐かつ恐らく誰も求めてないであろう大人の余裕を見せたかったのか。
どちらにせよ、柊吾の薬指に輝くリングを見た時、私は激しく後悔した。


どこに向かおうとしているのか私たち、というより、私。
目の前で煙草を吸っている男の顔が、やけに冷たく見える。


行き先が欲しい、今は無性に。
それが叶わないのならば、せめて月明かりが欲しい。
闇の中ひとりあてもなく彷徨い続けるのは、想像以上に辛いことで、
私は、すぐに手の届く安易な光に手を伸ばしてしまう。幻の光に。


もし現状をまるきり無視出来るとすれば、私は柊吾に何を望むだろう?

抱いてもらおうか?バカなことすんなよ、って叱ってもらおうか?

どうしたいのか、わからない。
相手に何かを求めるだけの自分が嫌になる。

溢れる感情を飲み込むかのように、ジョッキのビールを一気に飲み下した。

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