悲しき素敵な欲望

□転がるグラスが嘘の数だけ
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『今回のアルバムは…、作風をがらっと変えてみようという話はずっと出てたんですよね。
だから自然に、新しい方に曲をお願いする形になったというか。
(今までずっと曲を提供していた)青山くんも、ポジションを確立した感じがあるしね。
詞に関しては、昔は私、自分のことを中心に書いてましたけど、今回はあえて、自分が経験したことない世界を、外部から見た感じで書きました。
楽しかったですよ。自分発だったらここまで言えないだろうなと思うような過激な言葉でも、主人公に乗り移った感じで書けたりしましたし。
でも、やっぱり自分は出ちゃいますよね。どれだけ歌の中で演じていても、本音は…ね。そこが面白くもありましたけど。自分と対峙していくっていう作業が』


どこまでが本音で、どこからが建前か。
少なくとも自分を商売にしている俺たちのような連中に、そんな馬鹿げた幻想を求めるのは愚かだ。

優しい金、輝く権利、興味本位の愛、
It's a Rock'n Roll world.

やはり、かつて愛した女の姿は幻だったのか。そもそも恋愛なんて、セックス及びそれに辿り着くまでの技の数々を披露する行為にすぎないのだろうか。


最終的に、別れようと言い出したのは美月の方だった。
このままじゃ、きっと2人だめになると。
アーティストらしく、なんとも遠回しに、かつ残酷な言葉で。
侑真には本当の私を知ってほしいの、なんてほざいて、自由奔放に振る舞ってた(あの頃の俺は、そう信じて疑わなかった)彼女が、
突如世間のしがらみを思い出した表情だった。

恋愛関係は解消しても、楽曲提供は続ける、という俺の申し出を、彼女はきっぱりと跳ねのけた。

「バカにしないで。dissolveした過去に縋るほど私は落ちぶれてもないし、器用でもないの」
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