レンアイユウギ

□恋愛遊戯・番外編〜私は月を描き、あなたはそれを見上げる〜
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カズに女がいる…。

カズというのは、私の旦那、宮下和昭。
彼と知り合って10年、結婚して8年。
決定的に女の存在を感じたのは、3年前。
あれから暫くおとなしくなったな、と思っていたら、ここにきてまた…だ。


女の勘を、なめてもらっては困る。
旦那の微妙な変化に、妻が気付かなくて誰が気付くのだ。
言葉にできない何かを、お互い感じ合えたから、結婚したんでしょう?
私は未だにそう信じてるよ、カズ。


贔屓目なしで見ても甘いマスクだし、細身のくせに筋肉質だし、
そりゃあ、そこらへんの女から見ても、カズはイイ男なんだろう。
だけど、あの時まで不思議なくらいに女の存在を感じたことはなかった。

どこかで巧く処理をしていたのか、本当に何もなかったのかは分からないが、火のないところにわざわざ煙を立たせることはなかろう。それは悪趣味だ。
それに、彼が纏う空気に何の変化もなかったのだ。

だけど、今度は勝手が違った。
まず3年前から、彼の中に迷いが生じ始めた。子供が母親に隠れて悪戯をするような。
後ろ手に何かを隠すように、彼は私に心を隠し始めた。

それでも私は何も言わなかったし、追及もしなかった。
彼に罪の意識があるのなら、きっとこの状況も好転する。
そうしたら本当に好転した、暫くは。


また状況が悪化したのは、3ヵ月程前からだ。
再び彼は迷い始めた。

質が悪いと思ったのは、カズの迷える魂が、3年前は私の許にあったのに、今度は他のどこかにあると感じてしまったことだ。

この男、私以外の女に骨抜きにされてしまったのだろうか。
これは心中穏やかでない。

嫌だぁ、行かないでぇ。
…と言いたいところだが、言わない。
他の女に現を抜かしてるような男に、縋りたくはない。
私にもプライドがある…って、こんなプライドが、裏目に出たのかもしれないけど。

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