黒犬と黒姫


□勉強
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【シリウスside】



「はぁ…、なんなんだよ」


結局、エバンズからは何も聞き出せなかった。
それどころか、弥守への気持ちを知られ牽制されて終わった。
あいつは一体なにをそんなに悩んでんだ?
誰に告白されても即返答のあいつが、今さら告白されて悩むともおもえねぇし。


「…わかんねぇ」


「何がわかんないの?」


急に現れた弥守に驚いて俺は思わず叫んだ。


「はぁ!?なんで、お前、今何時だと思って―――」


今は朝の5時、なんでこいつ起きてんだよ。


「ちょっと早く寝すぎちゃったから勉強でもしようと思って」


そう言って俺の前に座ると、弥守は本を広げて勉強をし始めた。
ピーターみたいに勉強が苦手なわけでもねぇのに、勉強熱心なヤツだな…。
そう思って覗きこんだ本に書かれていたのは、俺たちが1年の時に習った事ばかり。
なんでこいつ、1年の勉強なんか…そう思うが早いか俺は口に出していた。


「なぁ、なんで1年の勉強してんだよ」


ピタリと動きを止めてばつが悪そうに目線を泳がせた後、恥ずかしそうに、


「1、2年の勉強はやってなかったからわかんなくて…」


と、最後はうつむきながらそう言った。
は?1、2年の勉強がわかんねぇって…それなのに今の授業についてきてんのか?!


「凄いな」


「え?」


「だってそうだろ!基礎がわかんねぇのに今の授業についてこれてんだからすげぇよお前」


「凄くないよ…、今の授業だってリリーや先生が教えてくれたからわかってるだけだよ。
本当は授業についていくのがやっとで、期末試験のために今から少しずつ1、2年の勉強してるけどわかんなくて、リリーが教えてくれるって言ってくれたけど、今でも迷惑かけてるのにこれ以上迷惑かけれないし…」


エバンズは迷惑なんて微塵も思ってないだろうが、ここは何も言わずにおこう。
その方が俺の特になる。


「なら、俺が教えてやるよ」


「え?いいの?
ブラックだって勉強しないと…それに、迷惑じゃない?」


「迷惑なら、初めから教えてやるなんて言わねぇよ」


「…それなら、教えてもらってもいい?」


「ああ」


勉強を教えてる間はこいつと一緒にいられるし、役得だな。


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